
ユ・ソラ 「記録された日々」(参考作品)
ミクストメディア
色彩への憧憬は、時代や文化を通して、人々の心に内在する普遍的な衝動です。
たとえば、19世紀以降の印象派や野獣派に象徴される鮮やかな色は、深く記憶に刻み込まれ、いまもなお私たちを魅了し続けています。視覚情報のなかでも最も早く認識される色は、感情へ即座に働きかける強力な力を放ち、観る者に鮮烈な印象を残すのです。
しかし、アートをかたちづくる要素は色彩だけではありません。
自由な造形や絵筆のリズムは身体感覚を呼び覚まし、素材が成すマチエールは触覚を挑発します。あるいは、アートを取り巻く空間そのものが感覚質にそっと染み入るような、インタラクティブな体験も起こり得るでしょう。色彩の引力から感覚をほどけば、さまざまな要素が心の輪郭をなぞり、香り高いスパイスのように作品に深みと余韻をもたらしてくれることに気付くのです。
色彩から解き放たれることで目の前に立ち現れる、質感や技法の魅力。本展では、ガラス、銅版、木版、アクリル画、糸や布とアプローチもさまざまに、その表現が際立つ6名のアーティストをご紹介いたします。色彩に導かれないからこそ伸びやかに広がる視点と、新しい感覚のレシピを、ぜひ会場にてご体感ください。