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Bunkamuraドゥマゴ文学賞 パリのドゥマゴ賞 Le Prix des Deux Magots Paris

Le Prix des Deux Magots 2023

【受賞者】

Guy Boley(ギー・ボレー)

【受賞作品】

『À ma sœur et unique(たった一人の妹へ)』

【出版社】

Grasset

エリーザベト・フェルスターは、文筆家、文献学者、哲学者であり、生涯絶えず苦悩し、完全な孤独の中で生きたフリードリヒ・ニーチェのただひとりの妹である。ニーチェより2つ年下の彼女は、彼の原稿に目を通す最初の読者であり、仲間、崇拝者であった。兄の作品をまったく理解しないものの、早くからそれらを輝かしいものにすることを心に決める。そしてその通り、すべてをやってのけた。彼を看病し、手伝い、支えた。兄フリードリヒが生きていたなら憎悪したに違いないアドルフ・ヒットラーに、兄の手稿を売ることまでも。

一気に書き上げられた本作で、ギー・ボレーは彼らの人生における逸話のひとつひとつを紐解く。ナウムブルクでの兄妹が共犯関係にあった子供時代、ニーチェが大学教授となり、エリーザベトが助手を務めた彼らのバーゼルでの「夫婦」生活、ワーグナー家で過ごした週末と決裂、ルー・ザロメ事件、反ユダヤ主義者であることを公言するベルンハルト・フェルスターとエリーザベトが結婚し、1886年にフェルスターとともにコロニー「新ゲルマニア」を創設するためにパラグアイにわたったこと。その3年後、精神を患い、無意識となって病床についた兄の枕元に戻り、看病するといいながら、兄を裏切り、略奪したこと。愛情、孤独、復讐、裏切り、貪欲な野望、天性、憎悪、財産、非情。すべてがそこにある。天国にいる神々までサイコロを振っている。シェイクスピアの戯曲にも匹敵する小説である。

Guy Boley

1952年生まれ。ダンスカンパニーや劇団のドラマターグになる以前は、石工、工員、ストリートシンガー、火吹き男、アクロバット、道化師、サーカス団長、高所の綱渡り、大道具、シナリオライター、バス運転手、ボディーガード、サンタクロース、スタントマン、刑務所内の文章講座講師、ギター教師、映画講師などの職に就いている。
ドラマターグとしては、100を超える作品のヨーロッパ、日本、アフリカ、アメリカ合衆国での上演に関わっている。
3冊の著書をグラッセ社から刊行。『Fils du feu(火の息子)』(2016)は6つの文学賞を受賞(フランス文学者協会処女作品大賞、ジョルジュ・ブラッサンス賞、ミルパージュ賞、アラン・フルニエ賞、フランソワーズ・サガン賞…)。また『Quand Dieu boxait en amateur(いつか神がアマチュアボクサーだったとき)』(2018)にて7つの賞を受賞している。その他の著作に『Funambule majuscule(大きな綱渡り芸人)』(2021)がある。

パリで行われた授賞式レポートはこちら
https://www.bunkamura.co.jp/bungaku/topics/7989.html

パリ「ドゥ マゴ賞」公式サイトはこちら

https://lesdeuxmagots.fr/litteratures/guy-boley-prix-des-deux-magots-2023/

ドゥ マゴ賞の歴史

 「ドゥマゴ賞」は、1933年、アンドレ・マルローの『人間の条件』にゴンクール賞が授与された日に、パリの老舗カフェ「ドゥマゴ」の常連客だった作家、画家、ジャーナリスト13人によって、自分たちの手で独創的な若い作家に文学賞を贈ろうと創設されました。いかなる派閥からも独立していた彼らは、各々100フランずつを出しあって賞金を1300フランとし、アヴァンギャルドな精神にみちた将来性豊かな受賞者を選びました。第1 回の受賞者は、処女作『はまむぎ』を出版したばかりの当時30歳の新進作家レーモン・クノー。彼はのちにフランス文壇の最も先鋭的な作家のひとりとして活躍しています。第2回以降の賞金はその精神に共鳴したカフェ「ドゥマゴ」の店主が引き受け、毎年店内で最終選考及び受賞者の発表が行なわれています。現在の賞金は7700ユーロ。これまで1月に開催されていた授賞式は、90回を迎える2023年より9月に開催されます。
 創設時の主な選考委員は、ジョルジュ・バタイユ、マルティーヌ、ミシェル・レリス、ロジェ・ヴィトラックなど。
 Bunkamuraドゥ マゴ文学賞は、このパリのドゥ マゴ文学賞の先進性と独創性を受け継ぎ創設されました。

「カフェ・ドゥ マゴ」テラス

1933年 第1回選考委員会の面々。 左から、フランク・ドボ、ロジェ・ヴィトラック、カリタ、ジョルジュ・バタイユ。右から、アンリ・フィリポン、(ひとり女性をおいて)受賞者のレーモン・クノー、ジョルジュ・リブモン=デセーニュ。

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