
「生きているということは」
赤いコートに身を包んだ一人の人物が、さまざまな場所を旅する様子が描かれている新作には、容易に移動ができない今の社会状況下、絵の中だけでは自由になれるようにという願いが込められている。
「生きているということは」は、触手を伸ばした色とりどりの蔦が絡まる木々の中に、大人や子どもの肖像が描かれている。この蔦は行く手を阻んでいるのか、それとも共に生きようとしているのか、人物たちの表情からは、この混沌とした状況に戸惑いを見せているようにも、遠い未来を見据えているようにも見える。
一貫して黒の世界を描き続けてきた画家・田中千智の作品は約1000枚を越え、このコロナ禍において、生活環境や社会の仕組みが大きく変化する中で、画家としての新たな決意を感じることができる展覧会になっている。
Bunkamuraでは4回目の個展となる本展では、新作を中心にWall Galleryにも大作2点を展示する。このコロナ禍に向き合い、描きつづけるエネルギーを感じていただくことができる、田中千智の個展にぜひ足をお運びいただきたい。