カンヌ、ベルリンで連続受賞の快挙
現代のヨーロッパ映画シーンで最も重要な若手作家の一人
ベルギーの映画監督バス・ドゥヴォス、最新2作『Here』『ゴースト・トロピック』が日本公開!
2014年に長編第1作を発表して以来、わずか数年でベルリン、カンヌをはじめとする映画祭から熱い注目を集めているベルギーのバス・ドゥヴォス監督。1983年生まれのドゥヴォス監督は、これまでに長編4作品を監督。いずれも多言語・多文化が共生し「ヨーロッパの縮図」とも言われるベルギーにおいて、現代社会では見落とされてしまう些細な日常の断片をすくい上げて描くスタイルが特徴的だ。16mmフィルムの淡い美しさをたたえたスタンダードサイズの映像と、唯一無二のサウンドスケープを響かせるブレヒト・アミールのギター、ゆるやかに展開してゆく物語に身を委ねると、ふだんは見落としがちな、人のさりげない優しさや思いやりに気づかせてくれる。
「この」瞬間、「この」場所で、「この」偶然を
ドゥヴォス監督の最新作である『Here』は、ブリュッセルに住む建設労働者のシュテファンと、中国系ベルギー人で植物学者のシュシュのふたりを主人公に物語が進む。アパートを引き払い故郷のルーマニアに帰国するか悩んでいるシュテファンは、姉や友人たちにお別れの贈り物として冷蔵庫の残り物で作ったスープを配ってまわっている。ある日、森を散歩中に以前レストランで出会った女性のシュシュと再会し、そこで初めて彼女が苔の研究者であることを知る。シュシュに促されて、初めて意識し見つめたのは、足元に広がる多様で親密な世界。2人の心はゆっくりとつながってゆく……。
初夏の新緑の風景は、どことなくエリック・ロメールやアピチャッポン・ウィーラセタクンを思い起こさせるが、ミニマリズム的な演出や美学、撮影地へのこだわり、自然との関係、社会的弱者への偏愛という点ではケリー・ライカート監督作品との共通点も多い。また、予告の中で「世界と出会い直す魔法」というテロップが登場するが、『Here』は「我々が気付いていなかっただけで、新たな世界や新たな出会いへの扉は絶えず開き続けている」という希望を感じ取れる作品でもある。社会が混迷を極める中、映画を通して穏やかな光を呼び込もうとするドゥヴォスの野心的な語り口が、世界の映画祭で高く評価され、本作は第73回ベルリン国際映画祭エンカウンターズ部門最優秀作品賞&国際映画批評家連盟賞(FIPRESCI賞) ダブル受賞という栄誉に輝いている。
バス・ドゥヴォス(Bas Devos)監督
1983年生まれ。ベルギー・ズーアーセル出身。長編第1作『Violet』が2014年ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門で審査員大賞を受賞。続く長編第2作『Hellhole』も2019年の同映画祭パノラマ部門に選出されると、カンヌ国際映画祭監督週間では長編3作目『ゴースト・トロピック』が正式出品となる。最新作『Here』は2023年のベルリン国際映画祭エンカウンターズ部門の最優秀作品賞と国際映画批評家連盟賞(FIPRESCI賞)の2冠に輝く。
【2/2(金)同時公開】
『ゴースト・トロピック』
バス・ドゥヴォス監督長編3作目
第72回カンヌ国際映画祭監督週間正式出品
現代ヨーロッパの縮図とも言える大都市ブリュッセル。終電車を逃した掃除婦が帰宅するまでを描いた、
小さな小さな一夜の旅路。カンヌがベルギーの新鋭バス・ドゥヴォス監督を発見した記念碑的作品。