
「まだ温かい」
森をさまよっていると、ふと一匹のキツネが横たわっていることに気づきます。そこにあるのは眠りなのか、それとも命を終えたあとの静けさなのか。自然のなかで、生と死は私たちが思うほど明確に分かれてはいないのかもしれません。
自然界の命は、死を迎えたあと土へと還り、時が過ぎれば、その傍らに菌類が生じ、草木が育ち、新たな命へと受け継がれていきます。生と死は対立するものではなく、大きな循環の中で絶えずつながっている。瀬戸は、そうした自然の営みを、土のぬくもりを宿すテラコッタの質感を通して、彫刻の中に静かに息づかせています。
彫刻家・瀬戸優は、玉眼を埋め込む独自の技法で、主に実寸大の野生動物を制作してきました。手やヘラの痕跡、そして粘土の質感をあえて残すことで、その姿には確かな生の気配が宿り、澄んだ瞳と目が合えば、野生の凛とした佇まいの奥に、親しみや愛おしさが感じられる。大学在学中から複数の賞を受賞してきた瀬戸は、そうした静謐で親密な作品を作り続けています。
Bunkamura Galleryで開催した前回の個展「CIRCULATION」では、食物連鎖における「捕食の瞬間」に焦点を当て、獲物を前にした野生動物の緊張感と、生と死が交差する臨界点を鮮烈に提示。出品作品のほとんどが完売し、多くの来場者に強い印象を残しました。その続編として4年ぶりに開催する本展では、その瞬間を取り巻く時間へと視点を広げ、死と再生が織りなす生命の循環を、「存在」「野生」「循環」「再生」という四つの場面をたどりながら、会場全体で表現します。
本展では、獲物を狙うジャッカルや捕食を終えたハゲワシ、さらにはライオンの頭骨と植物、植物からオオカミにつながる食物連鎖など、新作を中心に約40点が並びます。初公開となる骨のシリーズやキャンバス作品とともに、野生の中に宿る静けさに耳を澄ましながら、生と死のあいだを緩やかに流れる時間を、ぜひ会場にてお楽しみください。
※イベントの開催も予定しております。詳細が決まり次第、こちらのページで順次公開いたします。
















