「昨年私は夏の一時帰国を挟んで
春から夏と秋から冬、とパリに居た、
又その度に数週間南仏にも滞在し制作していた。
―プロヴァンスの大地は熱い。熱く語りかける。
葡萄畑の道には満天が降りそそぎ、命たちが枝を広げ花を咲かせる。
パリは光る真髄、私を誘う、だがどの日も私には求道の道だ。
あてどなくセーヌの岸辺を彷徨いながら、
幾たびか自分はなぜここにいるのか、
画面を抱え、しみいるように風を吸った。
私の胸に宇宙などあるのか。
突如切り裂くように現れ画面が動く、
その容器がある、それだけ、
そんな不確定を肯定する、自分と手を結ぶ、やっと。
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ただ私の
風に消されるほどの足元に、
ぱっとシーツを開くごとく
画面に新しい固有ができるならば、
そんな画面を探したい。
春霞にルネッサンスの陽を。」
東京アトリエにて
大場節子
大胆なストロークで抽象と具象の融合した詩情を巧みに捉える大場節子。和歌山県の和楽器商の家に育ち、幼少から日本の伝統文化を受け継ぐ教育を受けながらも、油彩画を描く兄がいる自由な環境にあり、その気風を受け洋画家への道を歩んできました。1990年からヨーロッパへの取材を始め、現在も世界各地を取材しながらパリと日本のアトリエで精力的に制作活動を続けています。
力強く色面で構成されたヨーロッパの風景。風景であることは間違いないのに、大胆に抽象へと溶け出していく画面からは、捉えた世界をキャンバスに焼き付けようと格闘した痕跡が伺えます。そうした心情の切実さを見せつけながらも、一方では色面を具象に近づけヨーロッパで暮らす人々の営みを柔らかく描き出すという、目を見張るほどの柔軟な感性は大場節子ならではのものです。
Bunkamura Galleryでは2年ぶりとなる本個展。南仏にて葡萄畑を描いた迫力の油彩から、詩情あふれる水彩作品を含めた新作絵画をご紹介いたします。画面から流れ出すような大場節子の心の筆跡を是非、間近でご覧ください。
作家在廊予定: 毎日14時~17時
◆ギャラリートーク開催
作家ご本人より、新作を中心とした作品にまつわるストーリーについてお話をしていただく予定です。
開催日:4/15(土)
開催時間:15:00~(約1時間を予定)
会場:Bunkamura Gallery
※事前予約不要。
※無料でご参加いただけます。
※上記の時間に直接Bunkamura Galleryへお越しください。