後世の演劇人を触発し続けるアントン・チェーホフ最期の戯曲「桜の園」。
新訳と大胆な脚色、多彩なキャスト&スタッフを得て、串田版「桜の園」として生まれ変わる!
シアターコクーン初代芸術監督を務め、多彩な演出方法で無二の舞台を生み出してきた串田和美が、50年の演劇人生で初めてとなるチェーホフ作品演出に挑みます。名作『桜の園』をベースにチェーホフの様々なエッセンスと新しい視点を盛り込んだラディカルなチェーホフ劇が誕生します!
『桜の園』は、社会の転換期に生きる人々の哀しさや苦しみを繊細な視線で描き、現在まで世界中で上演され続けています。好んで書いた“ヴォードヴィル”の精神をこの作品にも持ち込み、“悲劇”をどこか軽妙な“喜劇”に仕立てたことも観客を魅了する要因といえるでしょう。
本公演では木内宏昌が新たに翻訳した戯曲に、“言葉で表しきれないものを差し示すのが演劇”という串田とともに脚色を加え、現代にも通じる滑稽なまでの人間模様をより鮮やかに描き出します。また、民族音楽や即興演奏などあらゆるジャンルをこなす太田惠資が音楽を担当し、個性豊かなミュージシャンとともに生演奏出演。さらにダンスカンパニーBATIKの主宰で振付家・ダンサーの黒田育世も振付として加わり、ジャンルを超えて活躍するプランナーの力が結集し作品世界を広げます。
“桜の園”と呼ばれる領地に出入りする商人<ロパーヒン>を演じるのは、圧倒的な色気と存在感を放ち、5年振りの舞台出演となる高橋克典。串田とは『もっと泣いてよフラッパー』(‘90)『セツアンの善人』(’99)以来のタッグとなります。領主ラネーフスカヤの兄<ガーエフ>に、数多くの舞台を踏み抜群の安定感と爆発的なエネルギーを併せ持つベテラン風間杜夫。新しい思想を持つ万年大学生<トロフィーモフ>に、飄々とした佇まいと硬軟自在な演技で多くの演出家から信頼が厚い八嶋智人。ラネーフスカヤの娘<アーニャ>に、シリアスからコメディまで幅広い演技に注目を集め、多方面で目覚ましい活躍を見せる次世代の女優 松井玲奈。養女<ワーリャ>に日本とフランスを拠点に活躍を続ける美波。串田和美は隣人の地主<ピーシチク>役で登場。そして、“桜の園”の女領主<ラネーフスカヤ>を、自然体で包容力のある人柄が多くのファンを魅了し、確かな演技力で個性を放つ小林聡美が演じます。また大堀こういち、池谷のぶえ、尾上寛之、北浦愛、大森博史、久世星佳など、多彩な実力派がずらりと顔を揃えました。
20世紀初頭のロシア。“桜の園”と呼ばれる領地。地主であるラネーフスカヤが娘・アーニャとともにパリから5年ぶりに帰国した。待ち受ける兄のガーエフ、養女のワーリャは再会を喜ぶが、一家の財産は尽き、地所の“桜の園”は売却を迫られていた。一家につかえてきた農奴の家の出であるロパーヒンは、今は若き商人として頭角を現している。“桜の園”の売却を避けるべく、ロパーヒンは別荘地として貸し出す事を提案するが、ラネーフスカヤとガーエフは現実を直視しようとしない。
娘のアーニャは、亡き弟の家庭教師であったトロフィーモフと未来を語り合う。ワーリャとロパーヒンは以前から互いに思い合っているが、どちらからも歩み寄れないままでいる。
“桜の園”が競売にかけられる当日にも舞踏会を開いているラネーフスカヤ。競売の行方に気もそぞろの夫人に、駆け戻ったロパーヒンが“桜の園”を競り落としたのは自分だと告げる――。