一人の少年の命を懸けた、12人の陪審員たちによる緊迫の法廷劇
1957年ベルリン国際映画祭金熊賞受賞作であり、アカデミー賞作品賞、監督賞、脚色にノミネートされた“法廷もの”の最高傑作『十二人の怒れる男』。もともとは1954年に放送されたアメリカのテレビドラマだった作品を、ヘンリー・フォンダが惚れ込んで脚本のレジナルド・ローズと共同で製作し映画化しました。2007年には、ロシア人監督ニキータ・ミハルコフによって舞台設定を現代のロシアに置き換えて映画化され、ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞やアカデミー外国語映画賞にノミネートされ世界的に高い評価を得るなど、新鮮で多様な視線は色褪せることなく、世界各国で影響を与え続けている偉大な作品です。日本でも、筒井康隆作『12人の浮かれる男」や、三谷幸喜作『12人の優しい日本人」をはじめ、インスパイアされた作品が数多くあり、日本の劇作家にも多大な影響を及ぼしています。
シアターコクーンでは、2009年11月に当時の芸術監督・蜷川幸雄演出で上演し、ちょうどその年の5月から日本でも“裁判員制度”が始まり、ストーリーを身近に感じることが出来るタイムリーな作品として話題を呼び、好評を得ました。
それから11年の時を経て、シアターコクーンが海外の才能と出会い、新たな視点で挑む演劇シリーズDISCOVER WORLD THEATREの第9弾としてイギリス人演出家リンゼイ・ポズナーを迎え『十二人の怒れる男』を上演いたします。日本初演出となるポズナーは、演劇だけでなく、オペラやテレビの演出も務めるなどマルチな才能を持ち、過去に『死と乙女(Death and the Maiden)」にてローレンス・オリヴィエ賞2部門を受賞するなど英国屈指の実力派です。シアターコクーン初登場となるポズナーが導く法廷劇の行方にご期待ください。
日本演劇界屈指の実力派がシアターコクーンに集結
舞台は陪審員室。部屋には陪審員の12人の男たち。
父親殺しの罪で裁判にかけられた16歳の少年は、有罪が確定すると死刑が待っている。
この審議に12人中11人が有罪で一致しているところ、陪審員8番が無罪を主張する。人の命を左右することに疑問を持った8番は、議論することを提案したのだった・・・
映画では名優ヘンリー・フォンダが演じたカリスマ性溢れる、鋭い知覚を持ち思慮深い陪審員8番を堤真一が演じます。そして、率直で礼儀正しいが仲間意識を好む陪審員長(陪審員1番)にベンガル。型にはまった思考を持つ控えめな陪審員2番に堀文明。騒々しく興奮しやすく息子との関係に問題を抱える陪審員3番に山崎一。雄弁な自信家、冷静沈着で論理的に意見を主張する陪審員4番に石丸幹二。厳しい労働階級の環境で育ち自分の考えに自信を持てない陪審員5番に少路勇介。人情に厚い塗装業者で公平性の持ち主だが自分の鋭い意見はない陪審員6番に梶原善。シニカルな冗談好きで野球の試合に間に合うことばかり考えている陪審員7番に永山絢斗。謙虚で公平な分別を持つ一番の年長者陪審員9番に青山達三。自己中心的で威張り屋、人種差別な側面を持つ陪審員10番に吉見一豊。教養がある知的な紳士だが気難しさを持つ陪審員11番に三上市朗。見た目は良いが調子のよい広告マン、裁判にもあまり真剣に取り組む気がない陪審員12番に溝端淳平。
お互いの名前も知らぬまま、激論の果てに、それぞれが虚栄心を引き剥がされ、弱みをさらけ出し、ぶつかり合うことになる男たち。日本屈指の俳優が一堂に会し、緊迫の会話劇に挑みます。
無作為に選ばれた十二人の陪審員たちが、有罪か無罪かの重大な評決をしなければならず、
しかも全員一致の評決でないと判決はくだらない。
法廷に提出された証拠や証言は被告である少年に圧倒的に不利なものであり、
陪審員の大半は少年の有罪を確信していた。
予備投票が行われる。
有罪11票、無罪1票。
ただ一人無罪票を投じた陪審員8番が発言する。
「もし、我々が間違えていたら・・・」
陪審員室の空気は一変し、男たちの討論は次第に白熱したものになっていく・・・