2016年『るつぼ』に続き、才気みなぎる英国人演出家ジョナサン・マンビィがシアターコクーンに再登場。 魅力あふれる実力派キャストが集結しお贈りする、イプセンの社会派ドラマの傑作!
“近代演劇の父”とも称されるノルウェーの劇作家ヘンリック・イプセンの代表作の一つ『民衆の敵』。『ペール・ギュント』『人形の家』『ヘッダ・ガブラー』など、日本でも馴染み深い代表作を持つイプセンですが、その中でも1882年に発表されたこの『民衆の敵』は社会問題を扱った唯一の作品で、当時の社会に一石を投じました。ノルウェーからアメリカへ渡った本作は、アーサー・ミラーによって翻案され、ブロードウェイでの上演も高く評価されており、1978年にはスティーブ・マックイーン製作・主演によって映画化、2005年にはノルウェーで設定を現代に置き換え映画化されるなど、根強い支持を得ています。
この『民衆の敵』を、Bunkamura30周年記念、シアターコクーン公演の第1弾として上演する運びとなりました。さらに、今公演では、新たに戯曲を翻訳し、新訳での上演に臨みます。
演出を手掛けるのは、シアターコクーンには2016年の『るつぼ』以来2年ぶりの登場となるジョナサン・マンビィ。 ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)出身で古典から現代劇まで幅広く精通し、2009年には『The Dog in the Manger』にてヘレン・ヘイズ賞最優秀演出賞候補にノミネートされ、常に世界中で作品を発表し続けています。日本でも『るつぼ』での演出が各方面で絶賛され、その実力は折り紙つき。本作にも高い注目が寄せられます。 そしてジョナサンとの2度目のタッグで主演を務めるのは、堤真一。「真実の告白」を志すばかりに、次第に「民衆の敵」であると憎悪され、やがては家族との幸せも危うくしてしまう孤高の男トマス・ストックマンをどのように演じるのか、期待が高まります。そんなトマスの味方となり支え続ける妻カトリーネに安蘭けい、新聞「民報」の編集者でご都合主義のホヴスタに谷原章介、トマスとカトリーネの娘で教師のペトラに大西礼芳、ホヴスタと同じ「民報」の若き記者ビリングに赤楚衛二、カトリーネの養父で、水質汚染の原因である製革工場の主モルテン・ヒールに外山誠二、住宅所有組合の会長で印刷屋のアスラクセンに大鷹明良、トマスの唯一の理解者ホルステル船長に木場勝己、そしてトマスの実兄で、市長にして警察署長、温泉管理会会長も務める町の権力者ペテル・ストックマンに段田安則など、魅力あふれる実力派が集結しました。
その発見の功労者となった医師トマス・ストックマン(堤真一)は、その水質が工場の廃液によって汚染されている事実を突き止める。汚染の原因である廃液は妻カトリーネ(安蘭けい)の養父モルテン・ヒール(外山誠二)が経営する製革工場からくるものだった。トマスは、廃液が温泉に混ざらないように水道管ルートを引き直すよう、実兄かつ市長であるペテル・ストックマン(段田安則)に提案するが、ペテルは工事にかかる莫大な費用を理由に、汚染を隠ぺいするようトマスに持ち掛ける。一刻も早く世間に事実を知らせるべく邁進していた、新聞の編集者ホヴスタ(谷原章介)と若き記者ビリング(赤楚衛二)、市長を快く思っておらず家主組合を率いる印刷屋アスラクセン(大鷹明良)は、当初トマスを支持していたが、補修費用が市民の税金から賄われると知り、手のひらを返す。兄弟の意見は完全に決裂し、徐々にトマスの孤立は深まっていく。カトリーネは夫を支えつつも周囲との関係を取り持とうと努め、長女ペトラ(大西礼芳)は父の意志を擁護する。そしてトマス家に出入りするホルステル船長(木場勝己)もトマスを親身に援助するのだが……。
トマスは市民に真実を伝えるべく民衆集会を開く。しかし、そこで彼は「民衆の敵」であると烙印を押される……。
日本では、2012年の佐藤健・石原さとみ主演『ロミオ&ジュリエット』(東京・赤坂ACTシアター/大阪・シアター BRAVA!)の演出で初進出。2016年のシアターコクーンでの『るつぼ』が2作品目。近年の演出作品に、『Wendy and Peter Pan』(RSC)、ジョナサン・プライス主演『The Merchant of Venice』(RSC)、『OTHELLO』、『ALL THE ANGELS』、『KING KONG』など。イアン・マッケラン主演で昨年上演し好評を博した『リア王』がこの夏から限定公演でウエストエンドに進出、大きな話題を呼んでいる。