
©Journeyman Pictures
ケン・ローチの真⾻頂、此処にあり!
のちに『⻨の穂をゆらす⾵』(06)、『わたしは、ダニエル・ブレイク』(16)でパルムドールを2度受賞するイギリスの名匠ケン・ローチが、1977年にBBCのドラマ枠「プレイ・フォー・トゥデイ」のために制作したテレビ映画「⽯炭の値打ち(The Price of Coal)」は、⼆部構成の社会派ドラマ。1969年に公開された映画『ケス』に続く、脚本家バリー・ハインズとのタッグ作品で、英国社会の象徴でもあった炭鉱という労働現場を舞台に、皇太⼦の視察訪問に右往左往する⼈々をコメディ調で描く第⼀部と、⼀転してハードでシリアスな第⼆部の⼆部構成で、炭鉱の⼈々の暮らしと⼈⽣がじっくりと描き出される。
はみ出し者映画の特集イベント「サム・フリークス Vol.27」で上映された際には、満席となり上映終了後には拍⼿喝采に包まれた。⽇本では未ソフト化・未配信のため⾒逃されていたケン・ローチ監督の最⾼傑作の⼀つである⼤作『⽯炭の値打ち』が遂に劇場初公開を果たす。
<作品概要>
第一部「炭鉱の⼈々(Meet the People)」
イギリス皇太⼦の炭鉱訪問を控えた炭鉱町が、急ごしらえの“演出”とも⾔えるような清掃や修繕をして、労働者たちが公式⾏事のためだけに動員される過程を、ユーモアとアイロニーを交えて描く。炭鉱の実態には⾒て⾒ぬ振りをし、形ばかりの体裁を整える当局の姿勢と、それに翻弄される労働者たちの姿には、階級社会の構造的な滑稽さと暴⼒性が鋭く映し出されている。
第二部「現実との直⾯(Back to Reality)」
第一部から⼀転して、炭鉱労働における労働者への⼈権軽視と管理体制のずさんさが引き起こす事故の悲劇を、淡々と、痛切に描写していく。死と隣り合わせで働く炭鉱夫たちと、その悲劇に直⾯した家族たちの現実に、観客は否応なく向き合うことになる。劇的な煽りが無い、そのリアリズムゆえに観る者の胸に深く突き刺さる。
※第一部と第二部を1つのプログラムとして上映いたします。