
「TOUCAN」 紙本着彩 2017年
人が集まる宴の様な楽しめる場所になるように。
作品発表の場を「FEAST(晩餐会)」に見立てた作家の、2年ぶりのBunkamuraでの晩餐会(個展)の舞台は「熱帯雨林」。大きな実をつけたバナナの木、奄美大島で台風の中強く咲き誇るブーゲンビリア、神々しさすら感じさせる白孔雀、自然の造形の不思議さを感じずにはいられない蘭…、熱帯雨林にまつわる様々な動植物やその世界そのものが、日本画で鮮やかに描き出されます。
主に1~2mm幅の面相筆やネイル用の細い筆で細密に描かれる作品は、まるで細胞の一つ一つまでもが表現されているかのよう。これから芽吹く蕾や枯れかけた葉に時間の経過を感じ、日常の中では見落としてしまいそうな自然の美を愛する作家の筆により、岩絵具や箔を用いた日本画の伝統的な技法がさらなる光を放ちます。
アメリカで高校生活を過ごしていた際に、広島の祖母から定期的に送ってもらっていた画集の中にあった、福田平八郎の作品に出会ったことが、日本画を描き始める大きなきっかけになったと話す栗原。彼のような、日常の中にひそんでいて見落としがちだけれども、あらためて知ると面白さを感じられるモチーフを切り取るセンスに憧れたとも。日本画自体の岩絵具の色や形、名前の美しさや、箔などの工芸やデザイン的要素がある面白さにも惹かれ、制作を続けています。
小学校時代はシンガポールで過ごした作家にとって、熱帯雨林はこれまで長く描きたいと思ってきたテーマ。ひとつ個展が終わるとすぐに次の個展のテーマを決め、開催までの日々はそのテーマに沿わせて生活をするという栗原由子がもてなす、熱帯雨林での晩餐会にご期待下さい。