
エリック・デマジエール
「蒐集室」
2001年 銅版 ED.150
華やかな街並みの裏側で、静寂に支配され荒廃した都市景観。およそ風光明媚という言葉からはかけ離れているが、独特の寂寥感や、どこか不思議で郷愁帯びた廃墟に潜むロマンティシズムは、古今の画家たちの制作意欲を沸き立ててきた。風景や建築物が長き風雪に耐え、歴史を見つめ続け、朽ち果てようとするとき、終末世界の声なき声は何を語るのか―。
古くはイタリアのジョヴァンニ・ピラネージ(1720-78)が多くの廃墟や実在しない幻想的な建造物を描き、19世紀にはフランスのシャルル・メリヨン(1821-68)が異常なまでの執着心でパリ風景を繰り返し銅版に刻み続けた。
20世紀はその先人たちの影響を受けた作家たちが登場。卓越したビュラン技法で、サディスティックでコミカルな終末観を描き出すフィリップ・モーリッツ(1941-)。建築家を志していたエリック・デマジエール(1948-)とジェラール・トリニャック(1955-)。文学的な馨り漂う、理想の建造物を追求するデマジエール、廃れた風景や建造物にフォーカスを当て続けるトリニャック。それぞれが独自の視点から世界観を提示する。
本展では18世紀から現代までの確かな描写力と類稀な感性で近代的な都市に変貌する時代の変わり目に失われ行く街並みを記録として描き留め、また現実には存在しない建築や情景を超現実的な感性で幻想的に、時には近未来的なSFタッチで描いてきた作家たちを一堂に集め展覧・販売いたします。隆盛の後にやってくる衰退という無常。終末世界の悟りをも醸し出す語りに耳を傾けた奇才の画家たちが訊いたものとは何だったのか。退廃した風景や事物の中に隠された「美」を見出し続けた画家たちの作業を、是非、ご高覧ください。
■出品予定作家
シャルル・メリヨン、ジョヴァンニ・ピラネージ、オディロン・ルドン、ジェラール・トリニャック、
フィリップ・モーリッツ、エリック・デマジエール、ジャック・ミュロン 他