止まった時間と澄み切った空間の中に佇む人物は何を見つめているのか?
日常の喜怒哀楽から解放された安らぎの表情は他者であって自分ではない。しかしそれは匿名性を帯びた自分の知らないもう一人の自分であり、無我に入った人間の本質的な表情なのかもしれない。日常に潜むある瞬間や身近なものを表面的な美しさではなく、被写体の精神性まで掘り下げ、巧みな技術で徹底したリアリティを追究し続ける塩谷亮。塩谷はマクロのリアリティではなく、被写体と対峙した時の距離感を意識しながら空間の奥深さや静謐な情感、光と影と言った現象を見つめていると語る。
武蔵野美術大学在学時より公募展やグループショーなどに出品、文化庁新進芸術家海外派遣研修員としてフィレンツェに滞在、ダ・ヴィンチやボッティチェリなど古典絵画の模写を通じ古典のリアリズムを学んだ。人物やモティーフと真摯に向き合い、ストイックなまでの徹底した観察眼と細密描写は新世代リアリズムの俊英として既に高い評価を得ている。並みならぬ集中力と完成まで長き時間を要する妥協を許さない制作スタイルは必然的に寡作となり、今回は7年振りの個展となる。
本展ではこの度初となる新刊画集の刊行記念として旧作から新作までの25点を展示・販売の予定。視る者の心の深淵まで語りかけてくる、画面から溢れ出た日常に潜んでいる瞬く間の叙情とリアルを実感して頂きたい。
<本展記念画集が発売決定!>
学生時代から最新作まで、20年余の軌跡を収録した初の大型画集。作品図版約100点掲載オールカラー。
寄稿/篠原弘(美術評論家) 解説/安田茂美(東京藝術大学客員教授)
・25×25cm
・価格 4,104円(税込)
・求龍堂発行