
オスカー最有力監督ヨアキム・トリアー
初期傑作群であり、都市に生きる若者の愛と孤独を描いた「オスロ三部作」として知られる『リプライズ』『オスロ、8月31日』『わたしは最悪。』を一挙上映!
このうち 『リプライズ』『オスロ、8月31日』の2作品は、日本初の劇場ロードショー公開。ついに日本で劇場体験できる貴重な機会です。さらに、同監督の最新作『センチメンタル・バリュー』が2026年2月20日(金)より公開。本年度アカデミー賞最有力との呼び声も高い新作公開を目前に、 ヨアキム・トリアー監督の“オスロ三部作”をスクリーンで体験できる特別な上映となります。
ヨアキム・トリアーの現在地へとつながる
記憶に棲みつく、愛と孤独の“オスロ三部作”
ヨアキム・トリアーは1974年生まれ。「オスロ三部作」の1作目にあたり、長編デビュー作の『リプライズ』(06)でノルウェーのアカデミー賞と言われるアマンダ賞の最優秀作品賞、監督賞、脚本賞を受賞し注目を集めます。続く『オスロ、8月31日』(11)が第64回カンヌ国際映画祭のある視点部門に出品されると、悲しみや孤独にフォーカスしながらも多くの人の共感を集める傑作として高く評価され、世界から新作が待望される監督となりました。その後初の英語作品でイザベル・ユペールを主演に迎えた『母の残像』(15)、異色のホラーとして賞賛された『テルマ』(17)と着々とキャリアを重ね、2021年、「オスロ三部作」の最終作として第74回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で上映された『わたしは最悪。』(21)で、主演のレナーテ・レインスヴェが見事女優賞を受賞。アカデミー賞も2部門でノミネートを果たし、多くの人が2021年のベスト映画に選ぶなど、日本でもヒットを記録しました。そして2025年、最新作『センチメンタル・バリュー』がカンヌの舞台で堂々のグランプリ受賞、本年度アカデミー賞最有力作品ともいわれ、現代映画を代表する名匠のひとりとなりました。
今回上映となる“オスロ三部作”は、単に同じ都市を舞台とする三作品ではありません。ヨアキム・トリアーがデビュー以来一貫して探究してきたテーマが、三人の主人公を通して結晶した、彼の作家性を最も明瞭に示すシリーズとなっています。そこに浮かび上がるのは、まず「記憶とアイデンティティの揺らぎ」。人物たちは過去・現在・未来のはざまで揺れ動き、“あり得たかもしれないもう一人の自分” の影が常に立ち上がります。また、人生の岐路で誰もが抱く「もし別の選択をしていたなら」という思考と、映画という媒体が持つ“反復/再演”の力が交差する、独特の語りの構造も三部作を貫いています。さらに、トリアー作品が繊細に描いてきたのが、「普通の人びと」の見えにくい苦悩と実存的危機です。成功と挫折、自己喪失、人間関係、社会の期待とプレッシャー。目には見えない現代の痛みが静かに滲み出ています。そして何より特徴的なのは、一人の人生に複数の時間が同時に重なり合う瞬間の表現です。心理や記憶、選択の分岐が、一つのショットや編集の中で立体的に浮かび上がり、観客は「時間そのものが揺らぐ感覚」を体験することになります。こうした独自の語りと実存的テーマの積層によって、“オスロ三部作”は国際的にも高く評価され、現代映画における重要作として位置づけられてきました。
◆上映作品◆
『リプライズ』
*日本初劇場ロードショー
2006年/ノルウェー/106分/R15+
© Spillefilmkompaniet 4 1/2
監督:ヨアキム・トリアー/製作:カーリン・ユルスル/脚本:エスキル・フォクト、ヨアキム・トリアー/撮影:ヤコブ・イーレ/音楽:オーラ・フロッタム/出演:アンデルシュ・ダニエルセン・リー、エスペン・クロウマン=ホイネル、ヴィクトリア・ヴィンゲ、オッド=マグヌス・ウィリアムソン
提供:JAIHO/配給:グッチーズ・フリースクール
若さの疾走と挫折の瞬間がリプライズする衝撃デビュー作
作家を志す二人の青年エリックとフィリップ。成功と失敗、友情とすれ違い、希望と絶望。人生の“リプライズ=反復/再演”を複層的な語りで描き出した、ヨアキム・トリアーの長編デビュー作にして、後の作風がすでに結晶した青春映画。のちにトリアーが「オスロ三部作」全作品や最新作『センチメンタル・バリュー』までタッグを組み続け、オリヴィエ・アサイヤスやミカエル・アース、ミア・ハンセン=ラブといった監督の作品に出演する名優アンデルシュ・ダニエルセン・リー初の本格的な映画出演作。
『オスロ、8月31日』
*日本初劇場ロードショー
2011年/ノルウェー、スウェーデン、デンマーク/94分/PG12
© Motlys AS / Norway
監督:ヨアキム・トリアー/製作:ハンス=ヨルゲン・オスネス、ジグべ・エンドレセン/脚本:エスキル・フォクト、ヨアキム・トリアー/撮影:ヤコブ・イーレ/音楽:オーラ・フロッタム/出演:アンデルシュ・ダニエルセン・リー、ハンス・オラフ・ブレンネル、マリン・クレピン、イングリッド・オラワ、ヨハンナ・ヒェルヴィック・レダン、レナーテ・レインスヴェ
提供:JAIHO/配給:グッチーズ・フリースクール
人生の縁に立つ孤独な男の魂の彷徨
薬物依存症からの回復施設にいるアンデシュは、面接のために一日だけ街へ戻る許可を得る。過去の友人や恋人と再会しながら、自らの人生の空白と向き合う彼は、“取り返しのつかない決定的な一日”を静かに過ごすことになる。ドリュ・ラ・ロシェル『ゆらめく炎』の精神を現代に移した傑作。その後トリアーの『わたしは最悪。』『センチメンタル・バリュー』の主演で圧倒的な輝きを見せることとなるレナーテ・レインスヴェが映画デビューを果たす。
『わたしは最悪。』
2021年/ノルウェー、フランス、スウェーデン、デンマーク/128分/R15+
© 2021 OSLO PICTURES - MK PRODUCTIONS - FILM I VÄST - SNOWGLOBE - B-Reel – ARTE FRANCE CINEMA
監督:ヨアキム・トリアー/製作:トマス・ロブサム、アンドレア・ベレントセン・オットマール/脚本:エスキル・フォクト、ヨアキム・トリアー/撮影:キャスパー・トゥクセン/音楽:オーラ・フロッタム/出演:レナーテ・レインスヴェ、アンデルシュ・ダニエルセン・リー
配給:ギャガ
人生は選択 ―― 時々、運命。
30歳を目前に、恋愛・キャリア・自己像に揺れるユリヤ。人生の岐路での選択と後悔、関係の終わりと始まり――オスロの街を舞台に、“いまを生きること”の痛みと愛しさを鮮烈に描き、世界中で絶賛された現代映画のマスターピースにして「オスロ三部作」最終章。主演のレナーテ・レインスヴェが第74回カンヌ国際映画祭で女優賞受賞の快挙を果たし、アカデミー賞で脚本賞と国際長編映画賞にノミネートされ、2021年のベスト映画として多くの人が名を挙げた1本。















