政治とカネ、マフィアとの癒着、職権乱用は朝飯前。その野心は燃え尽きることはなく、怪物ベルルスコーニは首相の座に返り咲こうと動き出す。今、狂乱の扉が開く──!
『グレート・ビューティー/追憶のローマ』『グランドフィナーレ』など、圧倒的な映像美で人生の甘美と悲哀を描き、21世紀の映像の魔術師とも呼ばれるイタリアの名匠パオロ・ソレンティーノ。待望の最新作となる本作では、スキャンダルにまみれたイタリアの元首相シルヴィオ・ベルルスコーニをモデルに選んだ。
時は2006年。因縁の政敵に敗北し失脚したベルルスコーニは、首相の座に返り咲くときを虎視眈々と狙っていた。政治とカネ、マフィアとの癒着、職権乱用は朝飯前。燃え尽きることなき野心と共に、いよいよ怪物が動き出す──。
「当時のベルルスコーニに蠢いていた“感情”の正体を知りたい欲求に突き動かされた」というソレンティーノが、ひとりの男の勝利への願望、成功への執着、そして愛の挫折を、めくるめく狂乱と絢爛の世界に映し出してゆく。その過激にして華麗なる唯一無二の映像は圧巻。9年にもわたって首相の座につき、国民を熱狂させたベルルスコーニの魔力にも重なる陶酔の157分だ。
スキャンダルにまみれた虚栄の肖像を見事に体現した、トニ・セルヴィッロの<怪演>
ベルルスコーニを演じるイタリアの名優トニ・セルヴィッロの怪演も本作の大きな見所。燃え尽きることのない野心、欲望を満たすためなら手段を択ばない狡猾さと圧倒的なパワーとともに、虚栄の先の孤独までも体現してみせる。一方ベルルスコーニに近づき成り上がろうとする青年実業家セルジョに、現代のイタリア映画界には欠かせない実力派リッカルド・スカマルチョ。また、妻ヴェロニカを演じるエレナ・ソフィア・リッチは本作の演技が称賛され、2019年ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞、2018年ナストロ・ダルジェント賞の最優秀女優賞に輝いた。
イタリア政治史上 最大の“ミステリー”ベルルスコーニの驚愕エピソード
◆総資産額は90億ドル(日本円にして約7,800億円)※首相在任中の2010年当時の推定)
建設業での成功で不動産王となったのち、大手テレビ局、新聞社、出版社を次々に買収、メディア王としても君臨。
◆横領・脱税・不正会計・マフィアとの癒着疑惑
多くの汚職で捜査対象となっており、幾つかは立件にまで到っているものの、首相の立場を利用して刑事捜査を棚上げさせた。
◆趣味は身だしなみ
夏休み中に整形・植毛をし、シークレットブーツを愛用する自称身長171cmの伊達男。
◆失言オンパレード
「オバマ大統領は若くてハンサムで、日焼けしている」ドイツのメルケル首相を指し「あの女とヤルなんて無理」被災地を訪れ「週末のキャンプみたいだ」など多数。
◆美女とブンガブンガ・パーティー
半裸の女性がストリップダンスを踊るパーティー「ブンガブンガ」を開いていたことをスクープされる。ブンガブンガはその年の流行語になるなど、女性問題は数知れず。
◆自身の応援歌「われらがシルヴィオに感謝」
劇中にも登場するベルルスコーニを称える応援歌は実際にあり、パーティーの参加者に歌わせた。