筆や綿棒で緻密に描かれた画面から透明感溢れる鮮やかな色彩を生み出す内海聖史。そのどこまでも広がり続けるかの様なハーモニーは、単なる絵画の枠組みを超えて、鑑賞者と空間をも包み込みます。特に大作からなるインスタレーション作品は、平面作品でありながら 立体的構造で展開され、ひとたび展示空間に足を踏み入れれば、色とりどりの粒が太陽の光のごとく一面に降り注ぎます。
Bunkamuraにて初めての個展となる本展で内海は、会場の鑑賞動線を読み解きます。
「絵画を設置した際、会場入り口から反時計回りに鑑賞を促される空間。」
その身体の動きから「コリオリの力」という慣性の法則との類似性を見出します。鑑賞者は、コリオリの力によって導かれるかの様に中央に辿り着き、そこではじめて作品の全貌を観ることができます。台風が左に渦巻く様に、私たちもまたその空間に展示された絵画によって絵画の在るところへ導かれるのです。
自由に絵画を鑑賞している(と感じている)時の身体の動きと、鑑賞するために強制的に求められる身体の動きが同じでも、人は自由に絵画を鑑賞していると言えるのでしょうか?
ただ目の前に立って観るだけではなく、そこにたどり着くまでのアクションや関係性が内海の色彩空間にさらなる深みを持たせ、存在感を放ちます。
東京都現代美術館や上野の森美術館での展覧会をはじめ、パレスホテル東京や虎ノ門ヒルズなど、パブリックアートの分野でも高い評価を受けている内海。目で見るだけに留まらない、身体で感じる色彩空間をお楽しみ下さい。