
「タイリクオオカミ」(2019年)
アクリル、鉛筆、インク、イラストボード
飼い慣らされていない動物の緊張感がありありと伝わってくるでしょう。
野生の気高さが際立つモノクロームの世界は、画家・増田寿志の集大成。
北海道虻田郡(あぶたぐん)倶知安町(くっちゃんちょう)出身の増田は、その豊かな自然に囲まれた幼少期に端を発し、野生動物や厳しい自然が垣間見せる荘厳な美しさに興味を持つようになったと言います。
北の大地を拠点に一貫して北方圏に生きる動物の生態を描き続けてきた増田の、東京初個展にご期待ください。
青い空、風に葉を揺らす樹々、飛び交う小鳥たち。
いつも“そこ”にありながら、黙して語らずの自然。
その奥にはいったいどんな“言葉”が秘められているのでしょうか。
日々の慌しさに追われるかのような私たちの暮らし。
まるで、何かを置き忘れるかのように、見失うかのように、時間は通り過ぎていきます。
しかしながら、ふと何かに足を止め、見渡すならば、自然はいつもただ“そこ”にあります。
野に咲く花に励まされ、小鳥のさえずりに心を和ませる、
時には遥かな荒野を行くオオカミを想う。
そんなささやかな自然との“共鳴”が、時には心の緊張を解き、
次の一歩を踏み出す何かを与えてくれるのかも知れません。
一羽のスズメが発する僅かな体温、エゾリスの微かな息づかい、オオカミの足跡に残された命の有りよう。
生命が放つその“気配”を一枚の画面に残すことが出来たらと思っています。
増田寿志