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愛と死の映画作家 ファスビンダー監督作品が今年も公開決定!
時代が追いつけない速さで駆け抜けた稀代の天才、ファスビンダーの傑作3本、ぜひお見逃しなく。
【上映作品】
『エフィ・ブリースト』
『自由の暴力』
『リリー・マルレーン 4Kデジタルリマスター版』
37年という短い生涯で40本以上もの作品を手がけたドイツの天才監督、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー。過激に、挑発的に、社会や人間のあり方を描き、その強烈かつ複雑な魅力は、今もフランソワ・オゾンはじめ多くの映画作家に影響を与えているほか、常に議論の的になり、また世界中の映画ファンの心を掴み続けている。そんなファスビンダー監督の選りすぐりの傑作3本が、昨年に続き【ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー傑作選2024】と題して上映決定。
『エフィ・ブリースト』は19世紀ドイツの作家、テオドール・フォンターネの小説の映像化で、『ベルリン・アレクサンダー広場』と並んで特異な魅力に溢れた文芸作品ながら今回が日本劇場初公開。圧倒的な構図の美しいモノクロ映像によって、社会の抑圧に違和感を抱きながら生きざるを得なかった若い女性の姿が描かれる。
強烈な重要作『自由の暴力』は、『自由の代償』の邦題での日本公開から約半世紀の時をへて、タイトルを更新し再公開。大道芸人として暮らしていた主人公がある日宝くじに当たり、金持ちの男を愛したばかりに何もかもを搾取されて破滅してゆく姿をとらえた本作はあまりに悲痛で、衝撃的だ。主人公は当時30歳だったファスビンダー自身が演じており、彼が初めて男性同性愛を真正面から取り上げた作品でもある。
ファスビンダー作品の中で最大の超大作といっても過言ではない『リリー・マルレーン 4Kデジタルリマスター版』は初の4Kデジタルリマスター版での公開。タイトルの“リリー・マルレーン”はかのマレーネ・ディートリッヒもカバーした第二次世界大戦中のドイツの流行歌で、時代に翻弄された実在の女性歌手の半生をエネルギッシュに描く。ファスビンダーがめずらしくナチス・ドイツを直接的に扱った作品かつ、最も製作費がかけられた作品のひとつで、豪奢なセットや主演、ハンナ・シグラが纏うドレスなど、まばゆい細部にも注目だ。
恋人同士や家族間であっても確実に存在する抑圧や力関係。労働者が搾取されることで成り立つ資本主義の冷酷なメカニズム。社会や時代が生み出したシステムが個人の感情や生活に及ぼす影響。それでも尚、絶対的なものとして君臨する愛や死。
3作品の舞台はどれも異なる時代であり、かつ、どれも40年以上前に作られた映画でありながら、描かれるテーマはすべて今も現実だ。時代が追いつけない速さで駆け抜けた稀代の天才、ファスビンダーの傑作3本、ぜひお見逃しなく!
【作品紹介】
『エフィ・ブリースト』(1974) ※日本劇場初公開!
原題:Fontane Effi Briest
脚本:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー 撮影:ディートリッヒ・ローマン、ユルゲン・ユルゲス
出演:ハンナ・シグラ、ウォルフガング・シェンク、カールハインツ・ベーム、ウリ・ロンメル
©︎Rainer Werner Fassbinder Foundation
1974年 / 西ドイツ / 140分 / モノクロ
ブリースト家の娘エフィは20歳も上のインシュテッテン男爵と結婚するが、男爵は年若い彼女をしつけようとする。それに違和感を抱いたエフィは若くて魅力的な夫の友人クランパス少佐と浮気をしてしまう。数年後、エフィと友人の裏切りを知った男爵は、クランパスに決闘を申し込むのだが…。19世紀ドイツの作家テオドール・フォンターネの小説の映画化であり、ファスビンダーにとっては後年の『ベルリン・アレクサンダー広場』にならぶ重要な<文学映画>。19世紀後半の家父長制度のなかで破滅の道をたどった女性の姿にファスビンダーが共感、彼の永遠のテーマでもある「社会への違和感」「夫婦、恋人間でのしつけや抑圧」が強くあらわれている。
『自由の暴力』(1974)
原題:Faustrecht der Freiheit
脚本:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー、クリスチャン・ホホフ 撮影:ミヒャエル・バルハウス
音楽:ペール・ラーベン
出演:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー、ペーター・カテル、カールハインツ・ベーム
©︎Rainer Werner Fassbinder Foundation
1974年 / 西ドイツ / 123分 / カラー / PG12
身寄りはアル中の姉しかいない大道芸人フランツ・ビーバーコップは宝くじに当たったのをきっかけに、ブルジョワのゲイのサークルに入り込み、ハンサムなオイゲンに恋をする。一夜で富と愛を手に入れたフランツは有頂天になってオイゲンに貢ぐが、ブルジョワのオイゲンと孤児のフランツとでは、趣味も会話も何もかも相容れなかった。ひとりの資本家の男を愛したばかりに、周囲の人間に利用され、搾取し尽くされて塵のように散っていく主人公フランツをファスビンダー自身が熱演。どんなカップルにも起こり得る、愛の名のもとに展開される哀しく痛ましい力関係、そして資本主義社会の冷酷さを苛烈に暴きだす人間ドラマの傑作。
『リリー・マルレーン 4Kデジタルリマスター版』(1980)
原題:Lili Marleen
脚本:マンフレート・プルツァー、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー 撮影:ザヴィエル・シュワルツェンベルガー 音楽:ペール・ラーベン
主演:ハンナ・シグラ、ジャンカルロ・ジャンニーニ、メル・ファーラー、カール・ハインツ・フォン・ハッセル、クリスティーネ・カウフマン、ウド・キアー
© 1980 by ROXY / CIP
1980年 / 120分 / 西ドイツ / カラー
舞台は第二次世界大戦下、ナチスの勢力が増すヨーロッパ。売れない歌手、ビリーはユダヤ系名門一家の息子で音楽家のロバートと幸せに過ごしていたが、ある日ビリーがスイスへの入国を拒否され、二人が離れ離れになってしまう。歌手としての成功を夢見るビリーはナチスの高官に気に入られ、「リリー・マルレーン」をレコードに吹き込むことに。「リリー・マルレーン」はひょんなことから兵士たちの間で大ウケし、ビリーはスターになる。そんなある日、ロバートが偽造パスポートでドイツに侵入し…。ファスビンダーのミューズ、ハンナ・シグラが時代に翻弄される歌手を熱演。盟友、ダニエル・シュミット監督のカメオ出演も見どころ。