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東洋の美を湛えるベトナムの秘境に語り継がれてきた
ある一族のファミリーヒストリー
19世紀の北ベトナム。14歳のメイは絹の里を治める富豪のもとに、三番目の妻として嫁いでくる。穏やかでエレガントな第一夫人には息子がひとり、美しく魅惑的な第二夫人には娘が三人いたが、一族にはさらなる男児の誕生が待ち望まれていた。 やがて、まだ無邪気だったメイは、この家では世継ぎを産んでこそ“奥様”になれることを知る。若き第三夫人がやってきたことで静かな里はさざめきたち、女たちのドラマが幕を開けるのだった──。
初夜の儀、甘美な秘めごと、禁断の愛など、エロティックな描写さえも絵画的な美しさを湛え、その甘い官能は観る者を陶酔させてやまない。
物語の舞台となる北ベトナムのチャンアンは、世界遺産として登録され、世界中から観光客が訪れるベトナムの秘境。輝く竹の翠、ランタンに灯る光、石を打つ雨だれの滴、女たちの纏うアオザイの色彩…、スクリーンには壮大な自然を背景に東洋の美が映し出されていく。
タブーに斬り込み、物議と絶賛入り乱れた衝撃のデビュー作。
監督はベトナムで生まれ育ち、ニューヨーク大学大学院で映画制作を学んだアッシュ・メイフェア。自身の曾祖母の体験をもとに脚本を執筆。それをスパイク・リー(『ブラッ ク・クランズマン』監督)が激賞し制作資金を援助した。またトラン・アン・ユン(『青いパパイヤの香り』『夏至』監督)が美術監修を手掛けるなど、巨匠たちも大きな期待を寄せる女性監督だ。数カ月間キャストと共にロケ地で19世紀の暮らしをするなど徹底したこだわりで、実に5年の歳月をかけて完成させた意欲作である。
本国ベトナムをはじめ東南アジア諸国では、一夫多妻のテーマはもとより官能的な描写が大きな物議を醸した。だが一方で、トロント国際映画祭、シカゴ国際映画祭をはじめ世界51の映画祭で熱狂的な支持を得て、数々の映画賞に輝いている。