●出演
ピアノ:ユリアンナ・アヴデーエワ
指揮:トーマス・ダウスゴー
管弦楽:BBCスコティッシュ交響楽団
●曲目
メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番(ピアノ:ユリアンナ・アヴデーエワ)
マーラー:交響曲第5番
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BBCスコティッシュ交響楽団 副コンサートマスター 伊藤奏子 インタビュー
『BBC Proms JAPAN 2019』、いよいよ10月30日(水)より開幕!11月4日まで、ほぼ連日にわたり演奏会の音楽を作り上げる楽団「BBCスコティッシュ交響楽団」。当楽団の日本人奏者で副コンサートマスターの伊藤奏子さんに、楽団の魅力や日本での公演に向けての意気込みを伺いました。
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伊藤: 正式には2014年夏からメンバーに加わりました。その前に、スコットランドに引っ越してきた2010年よりゲストコンサートマスターなどで何度かお仕事させていただいたので、長い間楽団のみなさんと演奏を共にしています。
Q: BBCスコティッシュ交響楽団の特色/特徴は?
伊藤: BBCのオーケストラはラジオ局付きのオーケストラなので、ほとんどのコンサートが録音され、後ほどBBCラジオのクラシックチャンネルで放送されます。そういう理由もあって私たちのオーケストラは、一般的に好まれるレパートリーよりも珍しいプログラムや現代曲、滅多に弾かれない作品などを取り込む機会が多くあります。また、スコットランド民謡などを弾くこともあり、色んな分野の音楽にすぐに対応できるオーケストラだと思います。
Q: マエストロ・ダウスゴーが、2016年シーズンから首席指揮者となりました。楽団の変化は?
伊藤: 彼はとても音楽に情熱的です。特に民族音楽や宗教音楽などとクラシック音楽のつながりを見つけて、なぜ作曲家達が他の音楽の影響を受けたかという面白い接点を追求するプログラムを組み立てるのがとても得意です。ですから彼が就任してからは、他の分野の音楽のプロの演奏を聴く機会ができたり、別の角度から作品を見つめる機会が多くなりました。
Q: 2019年「BBC Proms」の演奏会で印象に残ったことは?
伊藤: 今年は4回の演奏会に出演しました。その中でソリストの一人、Pekka Kuusistoがシベリウスのヴァイオリン協奏曲を弾き終わった後、アンコールではホールのお客さんに単純な旋律をハミングするよう指導し、それに合わせて自ら彼の国の民族音楽を弾いたのは面白いと思いました。彼のようにクラシックにこだわらず即興や作曲もでき、なおかつお客さんと交流が上手な演奏家は滅多にいません。同じコンサートの後半のプログラムではシベリウス第5番のオリジナル版という珍しいバージョンを演奏し、一般的に知られている5番とはまた違うシベリウスを見たようで面白かったです。
Q: 初来日となる楽団の皆さんは、日本での演奏について、どんな期待感を持ってますか?
伊藤: 日本に他の仕事で過去訪れたことがある人も初めての人も、みんなとても楽しみにしています。ラグビーのW杯と来年のオリンピックのおかげでこちらのテレビでも日本を紹介する番組が増えてきていて、みんな今から日本での演奏を楽しみにしています。素晴らしいホールやとても礼儀正しいお客さんの評判は、こちらでは話題になっています。
Q: 日本での「First Night of the Proms(ファースト・ナイト・オブ・ザ・プロムス)」。注目は?
伊藤: 「フィンガルの洞窟」はスコットランドにありメンデルスゾーンが気に入った場所でもあります。この序曲や交響曲第3番「スコットランド」はオーケストラにとって、より特別な親近感を持たせています。そういう曲でコンサートをオープンできることは最適と思います。そして、マーラー「交響曲第5番」は私たちのオケの素晴らしい金管と木管のメンバーを引き立たせられる大曲で、有名なアダージェットを含め皆さんに楽しんでいただけると思います。チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」のソリストで登場するユリアンナさんとの共演もまた楽しみです。
Q: 日本公演中に、イギリス、北欧、ロシア作品など、様々な楽曲を演奏されます。楽しみな点は?
伊藤: イギリスのオーケストラは、やはりイギリス音楽が上手です。私個人では、作品それぞれの思い入れというよりは、日本の素晴らしいホールで私たちのオーケストラが各曲でどんな音色を出せるかという興味深さがあると同時に、日本で活躍している素晴らしいソリスト達を自分のオーケストラに知ってもらえるという事が私には1番の喜びです。
Q: ご自身にとって「Proms」は、どんなイベント?
伊藤:「Proms」は本当に独特な音楽祭です。毎年、何度演奏していても、みんなが緊張したり興奮したりします。ステージから見る何千人ものお客さんの表情はいつも、私達がどうして音楽を演奏するかという理由に答えてくれるような気がします。プログラムがポピュラーだったり有名なオーケストラとソリストが来たりすると、朝早くから並んで格安チケットを買い、ステージの真ん前に確保されているスペースに立ち見して2時間ずっとコンサートを聴く音楽熱心な人たちが何百人といます。
ロイヤル・アルバート・ホールは立ち見の人を入れて6千人以上収容できる大きなホールで、そこで二ヶ月にわたり毎日素晴らしいオケが演奏していくというのは、他のどこにもみられない巨大なフェスティバルです。そういう音楽祭で毎年BBCの各オーケストラは演奏の機会を与えられますので、皆にとってもシーズンのハイライトとなっております。私もそういう場で演奏させてもらえるというのは本当に光栄に感じています。
5歳よりモスクワ・グネーシン特別音楽学校でエレーナ・イヴァノヴァの下でピアノを学び始め、後にシチェルバコフとトロップに師事。コモ湖国際ピアノ・アカデミーではナボレ、バシュキロフ、ツォンらの薫陶を受ける。
昨年はシドニーでのリサイタル・デビューを果たし、本シーズンにはシドニー交響楽団、メルボルン交響楽団より招致されている。そのほか、アカデミー室内管弦楽団やロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン放送交響楽団、フィンランド放送交響楽団、サンクトペテルブルグ・フィルハーモニーはじめ、多くの楽団と共演予定。
フィナンシャル・タイムズにて「音楽に呼吸をさせる」ことの出来るアーティストと評され、誠実で品位ある芸術性は同世代の優れたアーティスト達の中でも特に、急速にそのポジションを揺ぎ無いものとしている。
録音では、東日本を支援するため、2011年秋にチャリティCD『ショパン:ソナタ第2番「葬送」/英雄&幻想ポロネーズ』(KAJIMOTO)、2013年にブリュッヘン指揮18世紀オケとの『ショパン:ピアノ協奏曲第1・2番』(NIFC)をリリース。最新盤は、MIRAREレーベルからシューベルト、プロコフィエフ、ショパンのCDを発売中。
これまでに、BBC交響楽団、ロンドン交響楽団、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団、ゲヴァントハウス管弦楽団、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ヨーロッパ室内管弦楽団などと共演。北米では小澤征爾のアシスタントとしてキャリアを始め、ニューヨークフィル、クリーヴランド管弦楽団、ボストン交響楽団など、そしてアジアとオーストラリアではシンガポール交響楽団、シドニー交響楽団などと共演。また、BBCプロムス、エディンバラ国際フェスティバル、ザルツブルグ音楽祭、リンカーンセンターでのモーストリー・モーツァルト・フェスティバル、エネスク国際フェスティバルやタングルウッド音楽祭など音楽祭への出演も数多い。
彼の選ぶプログラムは独創的で革新的なものとして定評があり、高揚感ある演奏と70枚以上にも及ぶ数々の録音は大きな称賛を得ている。
BBC Promsには、2001年より出演、これまで17公演を行う。
日本での演奏は、2016年に新日本フィルハーモニー交響楽団、2015年に東京都交響楽団と共演。
BBC Promsは、世界中の音楽祭の中でも古く、特別な音楽祭だと思っています。世界中からトップクラスのオーケストラが、この音楽祭に参加するためロンドンに集まり、期間中には素晴らしい数々のプログラムが披露されます。演奏家たちにとって、音楽への情熱を様々な人と分かち合う、素晴らしい機会になっていると思います。バラエティに富んだ様々な楽曲が演奏され、観客にもオーケストラのメンバーにも、そして演奏家にも、素晴らしい出会いの場であり、音楽そのものをお祝いする特別な場になっていると思います。このBBC Promsがロンドンから飛び出し、今年は日本で開催されるということが、とても素晴らしいことだと思います。初開催となるBBC Proms Japan 2019に参加するということを、今から楽しみに、そして誇らしく思っています。
≪トーマス・ダウスゴー≫
BBC Promsを連れ出すとはなんとも突飛なアイディアだと初めは思いましたが、それよりも何より、今回の公演にBBCスコティッシュ交響楽団と一緒に行けることに大変な幸せを感じています。日本のお客様が大好きですし、皆さんと大きなパーティをしたいと思います。プロムスの最終夜はお祭りのような、大変陽気な楽しい空間になることでしょう。今から大変楽しみにしています!