
「Sealed Building -Tokyu Bunkamura 3-」
郊外には新興住宅地が広がり続け、都市部には高層ビルが伸び続ける現代日本。新たな建物が建つことにより、かつてあった建物や場所は忘れられ、そこに広がる風景は刻々と変化を続けていきます。けれども誕生した生命が幾許かの時を経て死を迎えるように、かつても、これからも建設された建物はいずれ解体されるでしょう。そして解体あるいは改装のあいだ建物を覆う養生シートは、かつての場所の忘却と新たに生まれる記憶の狭間を意味することになります。
人々が何を捨て、何を忘れ、何を見て、これから何を求めていくのか。油彩画家 西川茂は不羈奔放な筆致と色彩を用いて、その終始を見届けます。建物を覆う養生シートをキャンバスに見立てたその画面に環境や自然に対する自身の深い考察を反映し、同時に油彩画の新しい可能性への挑戦をも試みます。
Bunkamura初の個展となる本展では、開発にともなう長期休館(オーチャードホールを除く)を目前とするBunkamuraを題材とした最新作「Sealed Building -Tokyu Bunkamura-」をはじめ、渋谷区周辺を中心に、自ら取材した都市の様相を象徴的に描き下ろした一連の作品群を展示・販売いたします。
描かれた仮囲いのその向こうには、変わりゆく風景の移ろい、世情の変容があり、今が更新される未来が続いていきます。