全共闘、ベトナム反戦、アングラ、ヒッピーなど高度経済成長期の若者たちのエネルギーが時代を席巻した1960年代が終わり、1970年代の新たな時代の幕が開いた頃。
多感な思春期に時代の節目と遭遇、騒然とした世相の最中で、若くして病魔に冒されながら、未来という一筋の光りと「今」しか描けない作品を描き続けた髙田啓二郎(1951-1993)。
幼少期より病魔に冒された髙田は、悩み苦しみながらも見えない答えを探すため、自室にこもり、画いて描いて書いてを繰り返す日々を送りました。41年の短い生涯に3000枚を超す自画像を中心に描かれた作品、また多くの詩や散文の大半は、病が悪化する前の18歳から20歳頃に制作されました。それらは、描くことで自らの葛藤と病魔を癒しつつ、同時に他者に向けた限りなく優しい眼差しが作品の随所に見受けられます。
そんなカタチとして生み出されたモノと向き合い、自らの存在意義を自問自答し続けた光跡は、現在(いま)、芸術作品として新たな光が当たり、観る者の心の琴線に触れます。
病と闘いながら孤独の中で残された作品は、彼の死の翌年、友人たちの手でささやかな展覧会が催されました。そして四半世紀を経て、友人たちの思いはこの度、初の作品集となる「髙田啓二郎画文集 Kの劇場」に結実されました。
本展では画文集の刊行を記念し、18歳前後に描き下ろされた絵画作品を中心に展示・販売を行います。死後29年の月日が流れてもなお燃え尽きることのない自分探しの賜物を、ぜひその目に焼き付けてください。