第一次世界大戦でのドイツ人捕虜を収容した「板東俘虜収容所」(1917~1920)では、所長松江豊壽の博愛の精神に基づいて、ドイツ人たちの自主的な活動が許されました。彼らは音楽演奏・スポーツ・講演会などの活動を積極的に行い、そうした活動を印刷物や写真に記録しました。
特に、謄写版印刷によって製作された各種イベントのプログラムや絵はがきなどの印刷物は、収容所でありながら、華やかなデザイン性あふれる作品が数多く作られ、そのデザインには、ウィーン世紀末美術の影響が指摘されいます。
当展覧会では、こうした印刷物や写真などの貴重な資料の数々を,収容所について紹介したパネルとともに特別展示いたします。
「板東俘虜収容所関係資料」の概要
「板東俘虜収容所関係資料」は、板東俘虜収容所(1917~1920)で過ごしたドイツ人捕虜たちの約3年間の生活や優れた文化活動、当時の交流の様子等の成果を集成した、約700点以上にも及ぶ貴重な記録物です。その資料の大半は、帰国した元捕虜たちから「良き思い出」の品として徳島県の鳴門市に寄贈されたものであり、これらの多くは鳴門市ドイツ館に所蔵されています。
鳴門市ドイツ館の所蔵資料は、印刷物、写真・アルバム、書簡、美術工芸品など多岐にわたっており、これらの品々は100年の時を超えていまも大切に保管され、現在のドイツと徳島県・鳴門市の交流につながっています。
当該資料は、戦争で対立する関係であっても、互いの尊重と理解を通じた交流が可能であることを示しており、未だに紛争の絶えない現代において、希望を与える平和の象徴として、世界が共有すべき貴重な資料です。
※鳴門市ドイツ館所蔵の「板東俘虜収容所関係資料」はこちらから閲覧できます。(外部サイトにリンクします)