静岡は浜松市に、工房 アトリエ小市を構える作家、河合悌市(かわいていいち)。銅を用い、生活雑器をユーモラスな視点で捉えた作品をつくり続けています。
遠州シラス漁が盛んな舞阪漁港からほど近く、宿場町として栄えた江戸時代の面影を残す街並みの中に、アトリエ小市はあります。そんな場所に生まれ育ち、上京したのち独学で鍛金を習得。故郷に戻り工房を設立して20年。今年還暦を迎える人生の半分以上におよび「銅具」と向き合い続けてきた作家の、生真面目ながら飾らない人柄溢れる銅作品は、日本各地のファンを魅了し、愛されています。
今展では、銅鍋やジョウロ、フックなど実用性の高い暮らしの銅具をはじめ、動物モチーフのオブジェまで一堂に会し、展示販売いたします。素朴で控えめな佇まいを持つ“銅”と、金属を熱しながら叩く鍛金技法のひた向きな“職人”作業。無骨にも見えるその作品には息吹きある温もりとユーモアが溢れ、作家そのものの人間性をも思わせます。銅花器は、活けた草花の凛とした生命力を引き出し、オブジェの動物たちは、髭や尻尾や足の先まで、まるでフリーハンドで描かれたかのように自由に佇みます。
愚直なまでに、とことん、まじめに。わがまま、気まま、ありのまま。思わずクスッと笑みがこぼれる作品は、きっと日々の暮らしに寄り添うように、日常を彩ってくれることでしょう。