
「Vent solaire」 2017年
宗教と言う概念が生まれる以前、自然に対する畏怖と敬愛の念を持っていた古代の人々によって描かれた壁画・地上絵。古の人々が見たであろう燦々と輝く眩いばかりの星々やオーロラから放たれる神秘のベールは、人工的な灯りやスモッグにまみれた現代都市に生きる我々には見ることが出来ない。
文明が発展し、宇宙に飛び出せる科学力を持った時世でも尚、オーロラや星座など古代から現代に至るまで変わることない森羅万象の自然を追い求め、その神秘を描き続けている西美公二。
24歳で渡仏、パリに移住し創作活動を続けてきた西美は、近年かろうじて残っている最後の秘境を北極圏に求め、ノルウェー、フィンランド、アイスランドなど北半球の最果てを巡り、毎年オーロラを取材。歴史に刻まれた悠久の時間と無限に拡がる幻想的な自然界に深い感銘を受けた。ラスコーの洞窟壁画や世界遺産となったノルウェーはアルタの岩絵にインスピレーションを得たという体験から、粘土状にした紙を岩肌のようなレリーフ状の質感で下地を制作、そこに顔料などを幾層にも塗り込むことで描かれた星座やオーロラからは、眩いばかりの光を放ち、まるで古代の洞窟壁画から削り取ったような独自の技法と表現に開花させた。
広大無辺に拡がる宇宙の神秘や古代の根源的な美の本質をとらえた類い希なる探究心によって、天地万物の現象を落とし込んだ西美の作品群。本展では、ライフワークとして挑んできた遺跡・星座・オーロラなど、近年のテーマとなる作品40余点を展示する。
西美によって描かれた、古代の人々が見たであろう神秘の宇宙と悠久の古代を追体験していただきたい。