汗と反骨、それは魂のロックン・ロール!
1970年ビートルズ解散直後、彼らは世界一のロックンロール・バンドになっていた。
ロイヤル・アルバート・ホールでの伝説のライヴ、50年を経て世界初劇場公開!
この傑作ドキュメンタリーのハイライトは、クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル(CCR)が、1970年ビートルズ解散4日後の4月14日、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで行った伝説的なパフォーマンスすべてが収められていることだ。
レコード売り上げがビートルズに次ぐ2位の大ヒットメーカーでありながら短期間で解散してしまったバンド絶頂期におけるオリジナルメンバー唯一のフルライヴ映像で、これまで存在は知られながら完全な形で公開されることがなかった。それが今回、オリジナルの16ミリフィルムがロンドンの金庫で50年ぶりに発見され、終了後のスタンディング・オヴェーションが15分続いたというロック史上に残るライヴが4Kで完全に復元された。
前半は、バンドの日常の自然な姿を撮った映像やメンバー全員へのインタビュー、バンド初期のライヴ映像やウッドストックでの映像などを使い、北部カリフォルニアから飛び立って世界のトップ・バンドに飛躍した道のりも描かれている。
監督は、ビートルズやジミ・ヘンドリックスのドキュメンタリー(『ザ・ビートルズ・アンソロジー』『Jimi Hendrix Band of Gypsies』)でグラミー賞受賞のボブ・スミートン。ナレーションはアカデミー賞受賞俳優ジェフ・ブリッジス。イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドでは2022年9月16日からNetflixで公開されたが、劇場での一般公開は日本が世界最初となる。
4年間でロックの歴史を変えた世界のトップ・バンド
たった4年の活動期間で、その音楽は永遠となった。本作はアメリカン・ロックの歴史を変えた名バンドが頂点を極めるまでの軌跡を映像と音楽で辿ったドキュメントだ。
「プラウド・メアリー」「ボーン・オン・ザ・バイヨー」「トラヴェリン・バンド」「バッド・ムーン・ライジング」「グリーン・リヴァー」「雨を見たかい」「スージーQ」など、クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル(以下CCR)は数々のロックの名曲を生み出してきた。1960年代後半アメリカを代表するバンドのひとつとなり、“愛と平和の祭典”ウッドストック・フェスティバルにも出演。ザ・ビートルズの解散後、名実共に世界のトップ・バンドとなった彼らのライヴ・パフォーマンスが収められているのが本作である。
ビートルズ解散4日後1970年4月14日
1959年にハイスクールの友人だったジョン・フォガティ(ギター、ヴォーカル)スチュ・クック(ベース)ダグ・クリフォード(ドラムス)にジョンの兄トム・フォガティ(ギター)が合流してザ・ブルー・ヴェルヴェッツを結成。何度かバンド名を変更してから1967年にCCRとして再スタートしている。当時サイケデリック・ブーム真っ只中のサンフランシスコを活動拠点としながらブルースやカントリー、R&Bなどアメリカン・ルーツ・サウンドを軸とした音楽性は異色だったが、心を打つメロディとソングライティングは絶大な支持を得ることになった。
本国アメリカを制覇した彼らはその人気をグローバルなものにするべく1970年1月、初のヨーロッパ・ツアーに赴く。オランダ、ドイツでの公演を経て行われたのが4月14日・15日、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで行われたライヴだった。
「当時世界で一番人気があるバンドがザ・ビートルズで、私たちは二番目だった」と近年ダグは語っているが、“打倒ザ・ビートルズ!”とばかりイギリスに乗り込んでいった彼らを待っていたのは衝撃のニュースだった。何とその直前にポール・マッカートニーがザ・ビートルズを脱退、バンドは実質的に解散することになったのである。
そんなショックに遭遇しながら、CCRは入魂のステージを披露する。その全貌を捉えたのが本作後半のライヴ・パートだ。
15分間のスタンディング・オヴェーション
この日演奏されたのは、1970年の時点でのグレイテスト・ヒッツだ。「ボーン・オン・ザ・バイヨー」からスタート、「グリーン・リヴァー」「トラヴェリン・バンド」「フォーチュネイト・サン」「バッド・ムーン・ライジング」「プラウド・メアリー」など、全米チャート上位にランクインしたヒット・ナンバーが続く(映画ではタイトルに合わせ「トラヴェリン・バンド」を最初にもってきている)。
ラスト、8分半に及ぶ「キープ・オン・チューグリン」は凄まじい盛り上がりで、クラシックの殿堂として知られるロイヤル・アルバート・ホールがアメリカ南部の湿地になってしまったかのようである。ジョン・フォガティのギターとヴォーカルは絶好調で、バンドと共に大きなうねりを生み出す。当時バンドのポリシーでアンコールは行われなかったが、観客が誰も帰ろうとせず、15分にわたってスタンディング・オヴェーションと拍手が続いたという白熱のステージは息を呑む迫力だ。
50年ぶりに発掘された撮影フィルム
このライヴは撮影・レコーディングされたが、作品として発表されることなくずっとロンドンの倉庫にひっそりと保管されてきた。それが半世紀の年月を経て、遂に公開されることになったのである。
バンドの軌跡を辿る、ウッドストックを含む貴重映像や1970年ヨーロッパ各地のライヴやオフ・ステージ映像もふんだんに収録。ライヴに向けてヒートアップしていく作りとなっている。
監督ボブ・スミートン、サウンド・ミックスはジャイルズ・マーティン、ナレーションはジェフ・ブリッジス
本作の監督は『ザ・ビートルズ・アンソロジー』(1995-96)を手がけたボブ・スミートン。音声のミックスとリストアはザ・ビートルズの再発作業に多く関わってきたジャイルズ・マーティンとサム・オーケル(ジャイルズはジョージ・マーティンの息子)、ナレーションは『キングコング』(1976)『ビッグ・リボウスキ』(1998)などで知られる俳優ジェフ・ブリッジスが務めることで、まったく新しいCCRワールドを生み出している。
2022年9月CD発売
このライヴは2022年9月、『ライヴ・アット・ロイヤル・アルバート・ホール』としてCD化。映像作品は海外Netflixでアルバム発売と同時に配信開始、また海外レーベル限定スーパー・デラックス・エディションにBlu-rayが封入されたが、日本では映画館の大スクリーンでライヴ・スペクタクルが繰り広げられることになった。
日本公演から51年
ロイヤル・アルバート・ホール公演後もCCRは躍進を続け、1972年2月には来日公演が実現。日本武道館公演の開演5分前に地震が起こるというアクシデントに見舞われたものの、それ以上のライヴ・パフォーマンスで観衆の心を揺るがした。バンドは同年10月に解散するが、本作によって今、我々は51年ぶりに彼らのライヴを再体験することになる。
クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル(CCR)
アメリカのロックバンド。単純明快なロックンロールのベースに、ロカビリー、ブルース、R&B、カントリーから影響を受けた豊かな音楽性が特徴。サンフランシスコ近郊エル・セリート出身だが、サザン・ロックの先駆的存在であり、また泥臭いサウンドはスワンプ・ロックの代表ともいえる存在であった。4年という短い活動期間だが、シングル、アルバムともに多くの大ヒット作を残した。1993年にロックの殿堂入り。
1959年にジョン・フォガティ(Gt.Vo)、ステュ・クック(Ba)、ダグ・クリフォード(Dr) の3人が中学校時代に出会って結成されたザ・ブルー・ベルベッツを前身とする。後にジョンの兄トム・フォガティ(Gt) が加入。メンバー全員がカルフォルニア州出身。1967年サンフランシスコを拠点とするジャズ系ローカル・レーベルのファンタジー・レコーズと契約、バンド名をゴリウォッグスと変えてデビュー。翌68年にバンド名をクリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルと改めた。
同年にデビュー曲として発表されたのがルイジアナのシンガーソングライター、デイル・ホーキンスのカバー「スージーQ」。以後71年までの3年間に、「プラウド・メアリー」「バッド・ムーン・ライジング」「グリーン・リヴァー」「トラヴェリン・バンド」「ルッキン・アウト・マイ・バック・ドア」など18曲が全米シングル・チャート入りを果たし10曲がトップ10入り。69年の『グリーン・リヴァー』と、その約1年後に発表された『コスモズ・ファクトリー』は、両方とも全米アルバム・チャートで1位を達成。この2枚の間に発表された『ウィリー・アンド・ザ・プアボーイズ』は3位という、爆発的な記録を打ち立てる。
世界のトップ・バンドになったCCRだったが、楽曲のほとんどを作曲し、サックスからピアノまで自分で演奏するジョンの才能に注目が集まりすぎたためにメンバー間の軋轢が生じ、71年1月にバンドのマネージャーも兼任していたトムが脱退。同年の「雨を見たかい」はビルボード8位となったが、72年10月にバンドは解散した。
セットリスト
1 Travelin’ Band トラヴェリン・バンド
2 Born on the Bayou ボーン・オン・ザ・バイヨー
3 Green River グリーン・リヴァー
4 Tombstone Shadow 墓石の影
5 Fortunate Son フォーチュネイト・サン
6 Commotion コモーション
7 Midnight Special ミッドナイト・スペシャル
8 Bad Moon Rising バッド・ムーン・ライジング
9 Proud Mary プラウド・メアリー
10 The Night Time Is the Right Time ザ・ナイト・タイム・イズ・ザ・ライト・タイム
11 Good Golly Miss Molly グッド・ゴリー・ミス・モリー
13 Keep on Chooglin’ キープ・オン・チューグリン