著者は23歳のとき、人々を魅了し、謎に包まれた作家ピエール・パオロ・パゾリーニの足跡を追うためにイタリアへ旅立つ。
『空虚で無限なフリウリ』からローマの町を彷徨する『歯止めのない夜』まで、著者はパゾリーニがたどった場面をくまなくさかのぼる。パゾリーニの体温が感じられるほどその場の空気を深く呼吸し、手で触れて感触を確かめる。見事に社会を挑発し、既存の概念を揺さぶりつづけたパゾリーニは、殺人事件から40年たった今も生前と変らず人々を刺激しつづけている。テレビと平凡な日常生活を誰よりも早く誹謗したパゾリーニは、消費社会を糾弾し、サッカーと素朴な田園生活の喜びを称賛、固定概念に包まれたなまぬるいブルジョワ生活を非難し、神聖化をやめ、タブーを解くことに懸命だった。そうすることで聖なるものに近づこうとしていたのだ。パゾリーニにもっとも寄り添った本作は、著者が本人になり代った探索の紀行文であり、弟の兄探し、生徒の師匠探し、新世紀のさまよえる魂である私たちの導き手探しでもある。
Bunkamuraドゥマゴ文学賞 パリのドゥマゴ賞 Le Prix des Deux Magots Paris
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Le Prix des Deux Magots 2016
【受賞者】
Pierre Adrian(ピエール・アドリアン)
【受賞作品】
『La piste Pasolini(パゾリーニの跡を追って)』
【出版社】
Éditions des Équateurs
Pierre Adrian
1991年生れ、フランス国籍。パリ在住。本書は作者の初の著作。