Bunkamuraドゥマゴ文学賞 パリのドゥマゴ賞 Le Prix des Deux Magots Paris
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Le Prix des Deux Magots 2010
【受賞者】
Bernard Chapuis(ベルナール・シャプイ)
【受賞作品】
『Le rêve entouré d’eau (水に囲まれた夢)』
【出版社】
Editions Stock
ある夏の夜、水辺に集まった仲間たち。酒を酌みかわし、煙草をくゆらす。会話は、自分たちの人生に大きな影響を与えたのち跡形もなく消えてしまった物について集中する。失われた物事。明日のない夢。しかし、時には長らく失われていた物が現れ、現実に戻ることがある。そして、長い間忘れられていたナチスドイツのインド部隊騎兵の鞍や、高価な木のベッド、ツアレグ族の戦士の剣、それに日本の松の木に再び光が与えられる。もしジュリアン・セナという民俗学者が1996年の飛行機事故で死亡しなかったら、もし想像力に富んだ彼の仲間が彼の4人の子供たちを養子にして育ててくれなかったら、このような出来事は起きなかっただろう。国際弁護士として成功したタルボは、仲間に遠征の資金提供を請け負う。69歳のヴァランティーヌは、母代わりという予想もしていなかった役割を引き受けスイスまで行き、ナチスの手から取り戻した、父より譲り受けた高価な木のベッドを年老いた従姉のところから持って帰る。猫2匹に、ルカという60代の魅力あふれる写真家と、ビショという無職の何でも屋も連れて帰る。ビショは、ジュリアン・セナの息子であるアルマンと一緒に30年間砂の中に眠っている、父がツアレグ族の戦士からもらった剣を探しにサハラ砂漠に出かける。曖昧な恋愛関係を持つビショは、物語の始めから終わりまで読者に語りかけたり、沈黙したり、戸惑ったりして読者を楽しませて感動させる。最後に、日本の松の木と昔の恋人を探しに目的の曖昧な旅に出かける。著者のベルナール・シャプイは今回の作品で、『La vie parlée(語られた人生)』や『Vieux garçon(オールド・ボーイ)』の中でも描写したような、あたかも再構成された家族のように、一生続く強い絆で結ばれている独特な仲間を描いている。『Le rêve entouré d’eau(水に囲まれた夢)』で描かれている仲間たちは、実に美しくて面白い。
Bernard Chapuis
1945年アルジェに生まれる。フランスの記者・作家。
1970年代に記者としてコンバ紙、カナール・アンシェネ紙に勤める。その後ル・モンド紙でR.エスカルピ氏が担当していた『Au jour le jour(その日その日)』の欄を引き継ぐ。2005年には小説『La vie parlée(語られた人生)』(ストック出版)でロジェ・ニミエ文学賞を受賞。