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「私のBunkamuraドゥマゴ文学賞」特別企画
【新たなトビラがみつかる本】No.1

(2022.03.15)

Bunkamuraではこの春、「ブンカチャージ2022」と題し、心の栄養となる様々な文化芸術体験をお届けいたします。この期間に合わせて、Bunkamuraドゥマゴ文学賞では、読書をより身近に、より深くお楽しみいただけるよう、書店員さんがおすすめする書籍をご紹介してまいります。

選書テーマは「新たなトビラがみつかる本」。新しいことに挑戦したくなる春にこそ読みたい、未知なる世界に誘う作品が登場します。本を選ぶのは、WEB連載「私のBunkamuraドゥマゴ文学賞」にご参加いただいた書店の方々。日頃から多くの文学作品に触れる書店員さんの、それぞれの想いをのせた推薦文とともに書籍をご紹介します。

今年の春は、新たなトビラを開く読書を体験してみませんか?


<No.1>

『マーク・ロスコ伝記』著/ジェームズ・ E. B. ブレズリン 訳/木下哲夫 ブックエンド
ブックショップ ナディッフモダン 飯塚 芽

どんな作家もアーティストも自分の作品を1つの言語として、何か伝えてくれていて…それをいつも私共の売り場で、展示でお客様に感じ取ってほしくてお店をやらせて頂いております。

アートは人の記憶のふたをあけてくれる装置のような、私にとってなくてはならないものです。

そこで私が今回のテーマでおすすめさせていただく御本は、『マーク・ロスコ伝記』です。                                                                                                           

私がマーク・ロスコというアメリカの抽象表現主義の画家が大好きで、彼の色について大学院時代に論文を書く際にこの著書を英語で読んでいて…この本がロスコを知るうえで欠かせない本であり、私のバイブルとなっています。

シュールレアリスムに傾倒したロスコがその後、より人間の内面、精神的で不可避なもの(形而上学的なもの)を表現するために、人間の無意識の“構造”に注目しそれを取り出した造形言語となるあの独特の様式(つまり画面に2,3の大きな矩形の色面が浮遊する)に到達することになります。

ロスコは描きながら極微としての自己を消去、あるいは知性や知識から解放された恍惚と忘我の状態にまかせきることによりうまれた自身の絵の世界から何か救いのようなものを感じていたのではなかろうか?

 「私は絵画を音楽や詩の高度で切実なものに高めたかったので画家になった。」

晩年に作られた彼の芸術の集大成であるロスコ・チャペルの空間の中で関連づけられ、まとまりをもち、取り囲み、包み込む全体的なダーク・ペインティングの壁画が醸し出す暗さ。

ロスコ・チャペルの疎隔された空間は、暗闇の要求に接触するのをいとわない観賞者にだけ、催眠状態の凝視のようなものを強いられることとなります。

常に絵画平面を超えたところにあったロスコの思いもこの本で知ることが出来ました。

日本では、川村記念美術館で彼の作品が常設でみられます。是非この本を読み、実際にみて、感じてください。


<推薦いただいた書店>

ブックショップ ナディッフモダン

絵画、彫刻、映画、写真だけでなく、音楽や建築など視覚芸術にとどまらない20世紀の芸術を幹とし、人・時代・場所を支点として好奇心の枝葉が広がっていくように、文学やライフスタイル系の書籍、絵本やデザイン雑貨なども集めた樹木のような書店。

https://www.bunkamura.co.jp/bookshop/


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