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N響オーチャード定期 2011-2012シリーズ
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N響オーチャード定期2011/2012シリーズ

第68回  2012/4/30(月・祝)15:30開演

ソリストインタビュー | INTERVIEW

パク・へユンさんは、2009年のミュンヘン国際音楽コンクール・ヴァイオリン部門で史上最年少優勝した韓国の新星。2011年7月、東京での初めてのリサイタルの直前に、お話をきいた。(7月27日・紀尾井ホールにて)

ヴァイオリンを始めたきっかけを教えていただけますか?

「ヴァイオリンは4歳で始めました。家族のなかで音楽家は私だけですが、母や親戚たちと一緒に避暑地に行ったとき、大きないとこが趣味でヴァイオリンを弾いて、私はまだ4歳だったけれど、その木で出来た物から音が出てきたのにすごくびっくりして、私はヴァイオリンを習いたいと思いました。始めは趣味で、週に30分レッスンを受けるだけでした。近所の知り合いが母に『この子には才能がある。きちんと勉強させた方がいい』と言うので、韓国総合芸術学校のプレ・カレッジのオーディションを受けました。そのときピアノと初めて合わせました。6歳でした。そして、プレ・カレッジから『いらっしゃい』と言われて、本格的にヴァイオリンを始めました」

子供の頃から、将来はヴァイオリニストになりたいと思っていたのですか?

「その頃は、プロとアマチュアとの区別もついていなかったけど、とにかくいい先生に習って、ヴァイオリンを弾きたかったのです。プレ・カレッジに入ったのは小学校1年生だったから、ただ楽しくて、一生懸命弾きました。プレ・カレッジが土曜日にあり、その準備のために学校を休んで練習したこともありました。6歳で受けた最初のコンクールで第1位をとりましたが、わけもわからず弾いていましたね。ただ音楽が好きで楽しく弾いていました。9歳でオーケストラと共演したり、リサイタルをひらいたりしました。
 10歳のとき、父に『アメリカに行きたい』と言いました。よい先生に出会って、お互い気に入っていたのでした。『私一人でも行くわ』と言ったのですが、結局、母と姉とともにアメリカ(シンシナティ)暮らしを始めました」

その後、ドイツに移って、ベルリンのアイスラー音楽大学に入られたのですね。

「今もベルリンに住んでいます。クラシック音楽をヨーロッパで勉強したかったのです。ヨーロッパのクラシック音楽は、韓国ともアメリカとも違う。勉強だけでなく、ヨーロッパでは何百年の文化の積み重ねを肌で感じます。ドイツは、どこに行っても歴史が生きている、文化の豊かな国です。ベルリンには、ベルリン・フィルのような世界一のオーケストラがあり、他のオーケストラやオペラやバレエもあります」

世界的なヴァイオリニスト、クリスティアン・テツラフさんに師事されてますね。

「2010年秋から師事しています。彼の音楽がすごく好きで、彼が何を演奏しても『クリスティアンだ』と思う。芸術家として大好きですし、個人的にもお慕いしています。音楽的には第2の父親ですね。テツラフ先生は私を励ましてくださり、先生から強さや信念をいただきました。そして、音楽家がいかに音楽を愛しているかを教えてくださいました。彼の演奏は、生命力と愛に満ち溢れています」

N響オーチャード定期では、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を演奏されますね。

「小さい子供でも習う曲で、私も9、10歳の頃に習いましたが、また弾くということで、今一度立ち返ると、エレガントで、ロマンティックで、色彩豊かで、たくさん語っていることがわかりました。そのなかに情熱もある。でも、それにはメンデルスゾーンに合った限度があり、過度はいけません。ユーモアもあります」

メンデルスゾーンではどのような演奏を目指しますか?

「メンデルスゾーンの意図を表現したいと思います。ヴァイオリニストは、作曲者から聴衆へのメッセンジャーですから。メンデルスゾーンのメッセンジャーになりたいですね」

共演するNHK交響楽団については?

「テレビで観たことしかありませんが、間違いなく世界トップクラスのオーケストラだと思います。今から共演をとても楽しみにしています」

音楽以外での楽しみは何ですか?

「友だちと会うのが楽しいですね。旅が多いので、なかなか会えませんが。友達と、映画やコンサートに行ったり。でも、お話しているのが一番楽しいですね。スポーツはテニスやジョギングをしたり。家では、インターネットしたり、本を読んだり、母と一緒に料理をしたりします」

インタビュアー:山田治生(音楽評論家)