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N響オーチャード定期 2011-2012シリーズ
N響オーチャード定期 2012-2013シリーズ
N響オーチャード定期 2013-2014シリーズ
N響オーチャード定期 2014-2015シリーズ

N響オーチャード定期 2013-2014シリーズ

第80回 2014/7/13(日)15:30開演

ソリストインタビュー/森麻季 | INTERVIEW

森麻季さんはNHK交響楽団とは何度も共演されていますね。

「N響のような世界的にも一流のオーケストラとご一緒するのは、いつもすごく楽しみです。初めての共演は、留学が終わった直後、2000年頃にモーツァルトのモテット《踊れ、喜べ、幸いなる魂よ》を歌ったときでした(注:2000年5月の定期公演、デイヴィッド・ロバートソン指揮)。N響は憧れのオーケストラでしたので緊張しましが、オーケストラが私の息遣いを余裕をもって聴いてくださり、助けてくださったのを覚えています。
 阪神大震災から10年目に、神戸でモーツァルトの『レクイエム』(注:2005年1月)をアシュケナージの指揮で歌わせていただいたのも、思い出深い演奏会です。追悼の意を込めた音楽から、マエストロの日本に対する思いがひしひしと伝わってきました。『レクイエム』のあと、『アヴェ・ヴェルム・コルプス』を歌ったのですが、本当に心に残る演奏でした。 また、マエストロ アシュケナージとは年末のベートーヴェンの『第九』(注:2005年12月)も歌わせていただきました。私以外の歌手は外国の方でしたが、わきあいあいとしたとても良いチームでした。最後の4人のソロでテンポがうまくいくと、マエストロがうれしそうに合図をしてくださったのを思い出します。  」

今回のコンサートでは、ヴェルディとプッチーニというイタリアのオペラのアリアを選ばれましたね。

「誰もが一度は耳にしたことのある、これぞイタリア・オペラという華やかなアリアで、どれも、歌い込んでいる大好きな曲です。N響とイタリア・オペラのアリアを歌うのは初めてなので、とても待ち遠しいです」

まずは《椿姫》から「ああ、そはかの人か~花から花へ」ですね。

「ヴィオレッタは、ソプラノのなかで1位、2位を争う難しい役だと思います。いろんなことを要求され、一人で演じ切らなければなりません。低音から高音まで、力強さからピアニッシモまで、ドラマティックな表現から技術的なものまで、いろんな面でこれでもかこれでもかと求められます。アリアひとつにしても毎回プレッシャーがかかります。気を抜くとガラガラと崩れるようなたいへんな曲です。だから最初に歌ってしまおうと思います(笑)。このアリアは、華やかさもあり、彼女の思いを弾けさせるのが大事ですね」

そのあと、プッチーニのオペラのアリアが続きます。

「プッチーニは、心に寄り添うようなメロディが素晴らしいですし、ハーモニーも心を打つようなものがあります。『ドレッタの夢』は、本当の愛さえあれば、という素敵な歌です。《トゥーランドット》の『氷のような姫君の心も』は、自決する歌で、強さもあり、一途な思いが表現されています。芸大の受験でこのアリアを歌いました。プッチーニを歌うには、声の成熟が必要です。私もキャリアを重ねてまいりましたので、プッチーニのアリアの表現をもう一度作り直したいと思っています」

最後は《ラ・ボエーム》の「私が町を歩くと(ムゼッタのワルツ)」ですね。

「《ラ・ボエーム》のムゼッタは、2010年にトリノ王立歌劇場でも歌った思い出深い役柄です。フリットリさんやアルバレスさんとご一緒しました。『ムゼッタのワルツ』は、リサイタルでもよくプログラムに取りあげるアリアで、華やかな曲です。  N響で聴くイタリア・オペラの名曲は、聴衆のみなさんにとっても新鮮に感じていただけるはずです」

オーチャードホールにはどんな思い出がおありですか?

「東急ジルベスターコンサートに出させていただいたり、芸術監督である熊川哲也さんの舞台で歌わせていただいたり、この9月には『オーチャードホール25周年ガラ」でも歌わせていただきます。大好きなホールです。リニューアルで響きも美しくなり、私たちの方も肩の力を抜いて歌えるようになりました。舞台から客席を見ても美しいホールなんですよ。」

インタビュアー:山田治生(音楽評論家)