ラインナップに戻る

N響オーチャード定期 2011-2012シリーズ
N響オーチャード定期 2012-2013シリーズ
N響オーチャード定期 2013-2014シリーズ
N響オーチャード定期 2014-2015シリーズ

休日のマチネにゆったりと名曲を楽しむ N響オーチャード定期2014-2015シリーズ

2014/11/9(日)、2015/1/31(土)、3/14(土)、4/29(水・祝)、7/4(土) <全5回>

Bunkamuraオーチャードホール

第82回2015年1月31日(土)15:30開演

ソリスト:カール・ハインツ・シュッツ インタビュー

2014年9月にウィーン・フィルのメンバーとして来日したカール・ハインツ・シュッツさんに、公演の合間を縫って、お話をきくことができた。
(2014年9月22日・ホテルオークラ東京)

まずは、フルートを始めたきっかけについてお話ししていただけますか?

「両親はプロの音楽家ではなかったのですが、クラシック音楽が大好きで、父はチューバを吹いていました。私は6歳でリコーダーを始めて、10歳からフルートを吹いています。私の住んでいたチロル地方はブラスが盛んで、私は本当はトロンボーンがやりたかったのですが、フルートが足りなかったので、フルートをやることになりました。チロルではフルートを吹く人が少なかったのですね。
 フルートの先生が私の才能を発見してくださって、私は高校卒業後にエヴァ・アムスラー先生のもとで勉強することができました。彼女がスイス出身だったので、彼女の先生であるオーレル・ニコレ先生に学ぶことができました。ニコレ先生は大学では教えてなかったので、プライベートで教えていただきました。その後、自分の母国語を離れて、フランス語で勉強したいと思い、リヨン国立高等音楽院(フィリップ・ベルノルドに師事)へ行きました。自分の音楽の境界を広げたいと思ったからです。また、フルート奏者にとっては、フランスは大切な国です。フランスの楽器は素晴らしいし、フランス語のアーティキュレーションも大事なのです。先生は三人とも、偉大なヴィルトゥオーゾでしたが、ヒューマニストでもありました。彼らから、フルートだけでなく、音楽全般を学べたのは幸運でした」

フルート奏者になったことをどう振り返られますか?

「フルートはブラスの中で一番の楽器だと私は思っています。オーケストラでもフルートは欠かせない楽器で、スコアでも一番上に書かれています。いうなれば、フルートは音楽という家の屋根です。オペラでは、フルートは、歌手の声とオーケストラの楽器の音をつなげる役割をします。オーボエやクラリネットは器楽的ですが、フルートは息を吹きかけるので声楽に近い。音楽という家の屋根ということでは、第1ヴァイオリンと同じです。ウィーン・フィルでは、フルートと弦楽器の絡み合いが素晴らしいのです。また、300年に渡る多くのレパートリーがあり、ソロも多い。フルート奏者となり、オペラもシンフォニーも室内楽も経験しました。フルートは、歌手と弦楽器をつなぎ、ソロも吹くなど、いろいろ取り組める素晴らしい楽器です」

今回の演奏会では、ザンドナーイの「フルートとオーケストラのための夜想曲」とモーツァルトのフルート協奏曲第2番を演奏してくださいますね。

「ザンドナーイの『フルートとオーケストラのための夜想曲』は少し前まで忘れられていた曲でした。私は、同じフルート奏者でウィーン国立音楽大学教授でもあるラファエル・レオネさんに教えてもらいました。昨年、ヴュルツブルクで演奏しました。フルートにはニールセンやライネッケの協奏曲もありますが、ザンドナーイのこの作品の特別な雰囲気は群を抜いています。単一楽章のロマンティックな作品です。その色合いはまるで画家が描いたかのように素晴らしい。オーケストラにピアノ、ハープも入り、聴き慣れない和音も現れますが、最後には素晴らしいメロディに戻ってきます。何もないところから始まって、途中でドラマティックにオーケストラが鳴り、また何もないところで終わります。楽譜の最初にイタリア語の詩が掲げられ、この作品はその詩に基づいています。モーツァルトの音楽に馴染んだ聴衆の耳をひらいてくれる作品だと思います」

モーツァルトのフルート協奏曲第2番は定番ですよね。

「モーツァルトのフルート協奏曲は第1番も第2番も私の人生とともにありますが、第2番がザンドナーイの作品に合うと思って選びました。ウィーン・フィルは、ウィーン国立歌劇場でよくモーツァルトのオペラを演奏しているので、モーツァルトを吹くと家に帰ってきたかのように感じます。モーツァルトのフルート協奏曲にはオペラのエッセンスが表れているのです。今回、ソリストとして、ザンドナーイとモーツァルトという2つの違ったスタイルの作品を吹く機会をいただいて感謝しています」

今回の演奏会で指揮を執るカレル・マーク・チチョンさんについてはご存知ですか?

「ウィーンで何回も共演したことがあります。ウィーン国立歌劇場で、彼がリハーサルなしで『セビリアの理髪師』の本番を振ったときは素晴らしかった。彼は作品を深く知っていました。彼はメゾソプラノ歌手のエリーナ・ガランチャの旦那さんで、歌声をよく聴いて、指揮を声につけるのがうまいのです」

ウィーンでの暮らしはいかがですか?

「ウィーンに戻ると、歌劇場の仕事があり、大学での授業があり、ソリストとしての活動もあります。どれも逃さず、全部やりたいと思います。ソリストとしては、2014年11月1日にバレンボイム&ウィーン・フィルとブーレーズの『エクスプロザント・フィクス』を演奏するのが楽しみです。ブーレーズは、私の師ニコレにとってとても重要な作曲家ですので、私とニコレをつなげる橋としてこの作品には意味があります。また、イスラエルではベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲のフルート版を演奏します。余暇は3人の子供と過ごしています。9歳と6歳の娘と3歳の息子です。上の娘とはヴァイオリン、下の娘とはギターを弾いて、息子とはミニカーで遊んでいます」

最後にオーチャードホールのお客様にメッセージをお願いします。

「私にとっては、日本に来ること自体に大きな意味があります。たくさんの聴衆の前で、N響のような日本一のオーケストラと、いろいろなフルート奏者が吹いてきたモーツァルトの協奏曲と新しい扉を開くザンドナーイの作品が演奏できるは、本当に楽しみです」

(インタビュー・文 山田治生)

チケット情報はこちら