WORKS作品紹介
アーティスト・鈴木康広の作品をBunkamura ザ・ミュージアム担当学芸員の菅沼万里絵がご紹介します。

《空気の人》
おなかから空気を吸い込み続けている、大きな《空気の人》。その体いっぱいにみなぎる空気は、そこに居合わせた人々が呼吸する空気でもあり、常に循環し続けています。さっき自分の体を巡った空気がやがて《空気の人》の体の中に。沢山の人が集まることでひとつの作品を形成していくプロセスに、その場のみんなで立ち会い、感覚を共有することができます。

《りんごの天体観測》
りんごの表面にある斑点をじっと見つめていると、満天の星空のようにも見えてきます。この見立てから生まれたこの作品は、中空のりんご模型に穴を開け、内部に灯りをともすと、かぶせたアクリルドームに光が星のように浮かび上がります。小さなプラネタリウムを外側から眺めているような、不思議な感覚に。

《まばたきの葉》
白い筒の先から吹き出しているのは、葉のかたちの白い紙。裏表にはそれぞれ、開いた目と閉じた目がプリントされています。クルクルと舞い落ちる様は、まるで「まばたき」のよう。円筒の差し込み口から葉を入れると、内部で撒き上げられ落ちてくる、このサイクルを来館者も体験することができ、その時々で少しずつ違った流れを生み出します。


《地球展開儀》
この作品は、地球を「ひらく」イメージを地球儀にした作品です。ずっと見ていると、ファスナーが海を切り開く船に見えてきませんか。ぐるりと地球をめぐりながら、現在進行形で航行を続けるこの船は、何を切り開くのか?来たる未来の幕開けか、いや、地層に覆われた古の世界を垣間見ているのか…空想は尽きません。代表作《ファスナーの船》から展開された作品のひとつ。

《足元の展望台》
この大きな足の台に上がれば、子どもは少し背伸びした大人の視点に、大人は自分の足元が今よりもっと近くに見えた幼少期の感覚がよみがえります。たった一段上がるだけで、見慣れた場所の風景も違って見えてきます。まるで自分の足で地表を踏みしめているような気持ちになる、ひとあじ違う展望台です。