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Kバレエ カンパニー フランチャイズ契約締結記念
Kバレエカンパニー/Bunkamuraオーチャードホール芸術監督 熊川哲也 記者懇談会 レポート

(2018.12.18)


 先月11月26日、2018年11月1日付で締結したKバレエ カンパニーとのフランチャイズ契約を記念し、芸術監督熊川哲也による記者懇談会が開催された。
懇談会は記者から熊川への質問により進行したが、フランチャイズ契約で名実ともにオーチャードホールというホームを持つこと、バレエ団運営、後進の教育、そして来年発表予定の新作『マダム・バタフライ』まで、質問は多岐にわたり、熊川哲也がいまこの劇場で見つめる過去、現在、そして未来へ抱く熱い想いに満ちた内容となった。
 


 

 会は代表取締役社長 中野哲夫の挨拶でスタート。この契約に至る理由のひとつは「2019年というBunkamura30周年、Kバレエ カンパニー20周年という節目の年に、芸術を取り巻く変わりゆく環境と、これからの次代を見据え、新しいチャレンジをしていかなくてはいけないと思った」ことだと話した。 開業当時よりフランチャイズ契約という形態を導入し、東京フィルハーモニー交響楽団と現在に至るまで契約が続いていることにも触れ、「力があり、想像力の豊かな芸術団体と一緒に劇場が組むことで、新しい芸術文化を発信できる」とフランチャイズ契約の意義を説明。さらに具体的なメリットとしては、「公演計画を早めに組めることに繋がり、お客様にとっても予定が立てやすくなる。Kバレエさんにとっても練習計画が組みやすい。我々にとっては編成計画が立てやすく、三者にとって素晴らしい結びつき」と語った。
「30年後や100年後に振り返ったとき、バレエ界はあそこで転換点を迎えていたんだなと言えるくらいの意気込みで、Kバレエさんと手を携えて一生懸命、新しいもの、素晴らしいものを作っていきたい」と締めくくった。

続いて芸術監督の熊川が「発展的な報告ができることに非常にワクワクした気持ち」と、にこやかに挨拶をスタート。Bunkamuraが開館した1989年は自身がローザンヌ国際バレエ・コンクールで金賞を受賞した年であること、ローラン・プティの新作を初演した10周年ガラや芸術監督として総合監修を務めた25周年ガラ、芸術監督就任記念で発表した『シンデレラ』などの想い出に触れ、「常にこの劇場に支えられてきた人生」だったとオーチャードホールとの縁の深さを強調した。続いて会は記者からの質問で進行した。様々な質問が出たが、以下にいくつか抜粋しご紹介する。

フランチャイズ契約への想い
 最初の質問は、この契約を経てのKバレエ カンパニーのこれからについて。今後、都内における公演のほとんどをオーチャードホールで公演し、名実ともに“ホーム”を得たことについて熊川は「ホームを持っているバレエ団は民間では我々しかいないので、そこに対して非常に誇りに思う。」と心境を明かし、「活動内容はこれからも自らの信念に従うことに変わりはないが、大好きな劇場にささやかながらブランディングのお手伝いと、過去30年の間先人が守ってきた東急の芸術に対する“イズム”を継承し、失望させないようにやっていきたいと改めて襟を正していきたい」と力強く語った。

渋谷という街での文化振興
 渋谷という街での文化振興についての質問が挙がると、まず社長の中野が「東急線沿線には非常にバレエを習っている方が多い。そして渋谷には劇場があり、そこには日本を代表するKバレエ カンパニーが活動している。全てが繋がり良い環境を生んでいる。東急沿線を魅力的な地域にするため熊川さんの力は大きい」と説明。続いて熊川も「常々話していることだが、渋谷はハイカルチャーとサブカルチャーの融合という可能性に満ちている都市」と街のポテンシャルを語り、「王道を歩んできた自分は、ハイカルチャーの文化継承者としての責任」を感じていることや、「100年前、100年後の方と同じ共通言語で通じるような普遍的なものを創るというプライドを持っている」と、自らのハイカルチャーたるバレエ芸術に向かう強固なポリシーを語った。

海外進出について
 海外公演など国外へのアピールについて問われると、「持論ですが、海外に行くのが国際化というのはオールドファッションだと思う」と切り出した熊川の答えは、「日本において外国のお客様が日本の劇場に足を運ぶのが真の国際化。実際にロイヤル・オペラ・ハウスも観客の大多数は観光客。観光客が劇場に来ることで、世界の舞台の中枢に入っていけるのでは」と、ありきたりな見解とは大きく異なるものだった。20代で世界の頂点を経験し、海外に対して特別の“憬れ”がない熊川だからこその答えだろう。
熊川は20年前このオーチャードホールで、ロイヤル・バレエの仲間たちを率い『メイド・イン・ロンドン』と名付けたグループ公演を開催している。この公演は日本のバレエマーケット史上伝説的な成功を収めた公演であり、このシリーズで熊川は、ダンサーとしての実力だけでなく卓越した演出力を日本の観客に知らしめたのだ。そのたった20年後、自らが日本でゼロから作り上げたカンパニーと作品で、"メイド・イン・ジャパン"として世界とボーダレスに渡り合えるようになるとは、改めて熊川の創造力のスピード感に驚かざるを得ない。

契約期間/オーチャードホールの魅力について
 5年という契約期間について熊川は、「自分がダンサーとして舞台に立つことが多くない今、5年の契約を結んでいただいたのはすごいこと」と感慨深く語り、「20年前から支えてもらっているTBSとも5年間の契約更新をしたばかり。僕個人を超えたバレエ団という夢が叶った」という心境を明かした。
また以前から度々「オーチャードホールは大好きな劇場」と公言しているが、その理由を聞かれると、「劇場というのは人間関係と同じで相性。都会の劇場なのでバックヤードは手狭だが、使いやすさ、使いにくさといったものを超越した空間でなければいけない」とし、その点オーチャードホールは、古巣のロイヤル・バレエ団の本拠地を引き合いに「ロイヤル・オペラ・ハウスとサイズ感がそっくり。横の広がりがなく余計なものが目に入らない一点集中型なので、世界観に入りやすい。これまで生み出してきた『シンデレラ』『クレオパトラ』など、自らの作品にもとても合うと感じている」と説明。改修工事を終え、5か月ぶりに劇場を訪れたという今日も「劇場が持つ魂、匂いなど最高に落ち着く空間」と再確認したという。

フランチャイズオーケストラ 東京フィルハーモニー交響楽団について
 開館時よりフランチャイズ契約を締結している東京フィルハーモニー交響楽団。今後2つのフランチャイズカンパニーによるコラボレーションの可能性について質問があがると、熊川は「Bunkamura25周年公演の際も共演させていただきましたが、周年事業などはその良い機会になる。来年も30周年公演が9月に予定されているが、東フィルさんと大きな作品を出せたらと考えている」との構想を明かした。

新作『マダム・バタフライ』について
 さらに、質問は来年予定されているKバレエ カンパニーの新作『マダム・バタフライ』へ。
「バレエは足を上げたり、ジャンプをしたり、ワルツで踊る西洋文化。日本と真逆なカルチャーのなかで、日本人として謙譲の美徳を表現しなくてはいけない」という難しさに触れ、「スカラ座のDVDをみて一気にスイッチが入ったが、オフになるのも早かった」というエピソードを明かし会場が笑いに包まれる場面も。同時に、オペラにはない追加シーンなど大作を予感させる熊川らしい独創性あふれるアイディアを語った。

自身の出演について『ベートーヴェン 第九』『カルメン』
 2019年最初のKバレエ カンパニー公演は『ベートーヴェン 第九』であり、熊川自身の出演が話題だ。久しぶりの出演について熊川は「失礼なようですが、お客様や自分の為というよりカンパニーの若手ダンサーのため」の決断だと明かした。また「ヌレエフなど当時のスターたちと一緒に舞台に立ち、拍手をいただいたことは財産となった」と自信の経験を振り返り、「伸び盛りの若手にも、(それを)見せてあげられるなら見せてあげたい。同じ空間で同じ空気を吸うことが大切」と、躍進する若手ダンサーへの想いに触れた。

20周年を迎えたKバレエ カンパニーのこれから
 最後に20周年を目前として、Kバレエの今後について話が及ぶと「人の3倍の早さでやってきたなと思う」と振り返った。さらに、「バレエダンサーは生身。若手も育っていて世代交代を進めてきているが、マネジメント業でも若手を育てないといけない」とし、「芸術監督は続けるが、今後は新たな人材を舞踊監督としてKバレエの中に置こうと考えている。人選はこれからだが、僕は現場を譲って演出や創作をしていけたら」と未来への構想を語り、懇談会を締めくくった。

 

懇談会写真:小林由恵
 




◆Kバレエ カンパニー・Bunkamuraオーチャードホールフランチャイズ契約についてはこちら

◆2019/1/31(木)~2/3(日) Kバレエ カンパニー『ベートーヴェン 第九』・『アルルの女』公演詳細はこちら

◆2019/3/6(水)~3/10(日) Kバレエ カンパニー『カルメン』公演詳細はこちら

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