メッセージ

僕が初めてオーチャードホールの舞台にたったのは1998年のことでした。以来、ダンサーとして愛着と敬意を抱き見つめてきたこの劇場ですが、光栄にもその劇場の芸術監督という責務を得たのは5年前のことです。今では、ときおり観客としてBunkamuraを訪れ、賑わう館内や開演を待つ観客の高揚感を目にし、自然と笑みがあふれる自分がおり、就任6年目を迎え、芸術監督として劇場を観察し、精査し、愛でる目線がすっかり染みついたことを嬉しく、そして誇らしく思います。
 就任以来、劇場の品位と格式を守り続けることを変わらぬスタンスとして掲げてきました。それを可能とするのは、劇場と長期的な展望で歩む優れたアーティスト、そしてそれを支持する高い審美眼を持った観客の存在が不可欠ということは言うまでもありません。
その一例ともいえる定期公演は、2017-2018年に大きな節目を迎えます。1998年より続いているN響オーチャード定期公演は、いよいよ100回目が間近に。注目の若手指揮者・山田和樹氏がマーラーの交響曲をすべて演奏する「マーラー・ツィクルス」、そして日本を代表するピアニスト・小山実稚恵氏による12年間24回という長期プロジェクト「小山実稚恵の世界」もついに最終回が近づいてきました。 同時に、引き続き新たなアーティストの発掘・紹介にも重きを置いていきたい。今年は、初来日となるフィンランド国立バレエ団や、世界が注目する指揮者バッティストーニ氏の新企画『オテロ』で、皆様への新たな出逢いをご用意しています。
 席に着けば、「そこに必ず感動がある」と確信ができる場所。劇場の長い歴史の一端を担う芸術監督として、誇りをもってその安心感をご提供していきたいと思います。

Bunkamuraオーチャードホール芸術監督 熊川哲也

©Takanori Fujishiro

熊川哲也
Tetsuya Kumakawa

プロフィール

1987 年、英国ロイヤル・バレエ学校に入学。89年、ローザンヌ国際バレエ・コンクールで日本人初のゴールド・メダルを受賞。同年、東洋人として初めて英国ロイヤル・バレエ団に入団し、同団史上最年少でソリストに昇格。93年、プリンシパルに任命された。98年に英国ロイヤル・バレエ団を退団し、99年、Kバレエ カンパニーを創立。芸術監督を務め、これまでに、自身の演出・再振付による11作の古典全幕作品を発表している。2013 年、紫綬褒章受章。2012年1月より、Bunkamura オーチャードホール芸術監督に就任。12 年2月、芸術術監督就任記念『シンデレラ』世界初演をはじめ、14年「オーチャードホール25周年ガラ」、15年「オーチャード・バレエ・ガラ~JAPANESE DANCERS~」で総合監修を務めるなど、豊かな時間を提供する絶対の場としての劇場作りに尽力している。