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N響オーチャード定期 2011-2012シリーズ
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第74回 2013/6/2(日)15:30開演

ソリストインタビュー | INTERVIEW

早くからその才能を開花させ、2005年のロン=ティボー国際音楽コンクールで第2位に入賞した南紫音さん。昨年、桐朋学園大学を卒業し、今は秋からの留学の準備のため、東京と実家のある北九州を行き来しているという。そんな彼女に今回の演奏会や近況についてきいた。(2013年5 月15日・Bunkamura)

今回はブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番を演奏されますが、どのような作品か、聴きどころを含めてお話ししていただけますか?

「ブルッフのヴァイオリン協奏曲は、ヴァイオリニストにとってコンチェルトを弾き始めて最初に通る道の一つです。小さい時から親しみのある曲ですが、今取り組んでみてもとても難しいです。本当にロマンティックですけど、作りがとてもシンプルで、そのどちらにもなり過ぎず表現するのが難しいのです。でも聴いている方は、第1楽章の冒頭から曲に惹き込まれると思います。第2楽章は歌い込むので、短いですけど濃い時間です。第3楽章は第2楽章とがらりと変わり、霧が晴れたような感じがします。第1楽章と第2楽章を続けて演奏しますが、楽章ごとの雰囲気の移り変わりを楽しんでいただきたいですね。また、ヴァイオリン がオーケストラとコミュニケーションをとる場所がたくさんあります。まずヴァイオリンが旋律を提示して、それにオーケストラが応える。そういうやり取りを 聴いていただけたらと思います」

NHK交響楽団とは今までに共演したことがありますか?

「初めてです。ただ、今年の初めにフィリアホールのモーツァルト・ガラでN響メンバーの室内オーケストラ(注:コンサートマスターは山口裕之)とモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第4番を共演しました。かちっとした演奏で独特の雰囲気を感じました。今回のブルッフがどんなになるのか楽しみです。
去年(11月)の定期公演で、ジャニーヌ・ヤンセンがブルッフの協奏曲を弾いたのですが、同じ曲なので聴きたいなと思い、聴きに行き、素晴らしくて感動しました。私はヤ ンセンが大好きなのですが、ソリストもオーケストラもコミュニケーションが素晴らしく、研ぎ澄まされた感覚で演奏しているのが印象に残りました。それで、今回の演奏会に向けてブルッフの協奏曲をどのように作っていくのかリアルに考えるようになりました。N響はソリストが弾きたいことを瞬時に察してくださるオーケストラだと思います」

オーチャードホールについてはどのような印象をお持ちですか?

「オーチャードホールでは、大友(直人)先生の指揮でオーケストラと短い曲を弾いたことがあります。私は、ジルベスターコンサートを小さい時から毎年家族とテレビで見ていたので、その舞台で演奏できるのはとてもうれしいです。それから私はオーチャードホールと同じ1989年生まれなのです」

近況をお話ししていただけますか?

「(桐朋学園)大学を卒業して2年目になります。うまくいけば、秋にドイツに留学します。そして来年春にリサイタルをする予定です」

大学時代はいかがでしたか?

「私は普通高校の出身なので、大学時代は、一人ではできなかったオーケストラや室内楽をしたり、友だちと音楽に浸ることができて、楽しかったです。大学3年生の頃、いろいろな音楽大学が出演するフェスティバル(注:2010年 の第2回音楽大学オーケストラ・フェスティバル)で、《英雄の生涯》のコンサートマスターを務めたのがとても印象に残っています。指揮は高関(健)先生で した。ソリストという感じではなく、オーケストラの一部分と意識して弾くことに注意しました。私は、ヴァイオリンを座って弾くことに慣れていなかったので(笑)、貴重な経験になりました。大学時代、副科でバロック・ヴァイオリンも弾きました。寺神戸(亮)先生に即興演奏やモダン楽器の限界なども教えていた だきました」

今回の演奏会への抱負をお話しください。

「お話をいただいたときから、とても楽しみにしている演奏会です。今、私のできるベストの演奏をすることはもちろんですが、それ以上にお客様に曲の雰囲気を伝えて楽しんでいただけたらと思っています。私は衣裳のデザインをするのがとても好きで、実は、今回も自分でデザインしたドレスを着ます。それもお楽しみに(笑)」

インタビュアー:山田治生(音楽評論家)