ラインナップに戻る

N響オーチャード定期 2011-2012シリーズ
N響オーチャード定期 2012-2013シリーズ
N響オーチャード定期 2013-2014シリーズ
N響オーチャード定期 2014-2015シリーズ

N響オーチャード定期 2012-2013シリーズ

第71回 2012/10/6(土)15:30開演

ソリストインタビュー | INTERVIEW

ベルギー在住で、ヨーロッパと日本を1年に何度も往復する多忙な堀米ゆず子さん。8月の短い帰国の間に、東京のご自宅にうかがい、N響やメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲についてお話を伺いました。

N響とはしばしば共演されていますね。N響オーチャード定期には1999年9月に登場されました。

「ショーソンの『詩曲』とラヴェルの『ツィガーヌ』ですね。オーチャード定期のあと、新潟へも演奏旅行をしました」

2年前にN響の定期公演で急遽代役で弾かれたベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲が素晴らしかったですね。

「ピンチヒッターでしたね(笑)。本番まで正味4日しかなかったので、イチかバチかでした。指揮の広上淳一さんがとてもよかったし、ベートーヴェンは江藤俊哉先生に本当に仕込まれたので、それが活きました」

N響に対する印象はいかがですか?

「ここ30年、一緒に弾かせていただいて、だいぶん変わったと思います。弦楽器の音が柔らかくなった。個人的に知っている方がたくさんいるので、N響とは室内楽をやっているような気分で、指揮者もいらっしゃるのですが、楽員の方と直接会話しているみたいに弾かせてもらっています」

今回共演されるルイ・ラングレさんについては?

「ラングレさんは昔、リエージュのオーケストラを振っていて、私の旦那(今は指揮者をしていますが)もそこでヴァイオリンを弾いていたので、何回も聴きました。とてもいい感じでしたよ。私は一緒に演奏したことはないのですが」

メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲についてお話ししていただけますか?

「メンデルスゾーンの協奏曲はコンパクトですべてが含まれていて難しいんですよ。ニューヨーク・フィルと共演したときも、コンセルトヘボウ管弦楽団と共演したときも、メンデルスゾーンを弾きました。3、4年前、有田正広さん(注:指揮者・フルート奏者)からバロック弦(注:巻いてないガット弦)で弾いてくれと言われて、自分の楽器にバロック弦を張って、ピッチを落として演奏したのが、とても勉強になりました。バロック弦はハイポジションの音が出ないんですよ。でもE線は決まると柔らかで良い音がするんです。バロック奏法では、ダウンとアップの弓が均等ではないし、スラーも違う。習慣で弾いていたことを見直す良いきっかけになりました。モダン楽器に戻ってもそのときの経験は活きています」

今回の演奏会はどうなりますか?

「そういうこれまでの経験をまとめて弾きたいと思っています。それと同時に、曲が今初めて生まれ、ここで作られていくという新鮮さをお客様と分かち合えたらいいなと思います。それにはまず、私が新鮮さを感じ、表現できないといけません。
 第1楽章は速いんです。アパッショナートだからアジタートな感じも必要。第2楽章は8分の6拍子の2つ(振り)だけど、6つの音に密度や豊潤さがなければなりません。内声の和音が変わっていくところでみんなうまく絡んで一緒に弾ければと思います。第3楽章は、4拍子ですから、速すぎるのはダメ。みんな速く弾きすぎています。あまり速いと表情が出ません。私も30年前に弾き始めた頃は、速すぎて、(一緒に絡む)フルートと合いませんでした。最初が合うかどうかで第3楽章の雰囲気が決まりますから大切です」

これからのご予定を教えていただけますか?

「今は、ブリュッセル王立音楽院で教えるのが主になっています。子供が2人いて、ベルギーの学校に行っていますが、18歳と15歳と少し大きくなったので、また自分のことにも集中したいと思っています。バッハ、ベートーヴェン、ブラームス、そろそろまとめの時期のような気がします。ブラームスは、来年、チェコ・フィルとヴァイオリン協奏曲と二重協奏曲の録音をすることになりました。タレント・レコードというベルギーの会社です」

インタビュアー:山田治生(音楽評論家)