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2025.07.09 UP

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渋アート施設おすすめ周遊プラン-美しい人を訪ねて 2

美術館巡りはいかがですか?
前回は、“美人画”や“装い”といった共通のテーマで開催されている山種美術館、太田記念美術館、國學院大學博物館の展覧会をご紹介しました(前回の記事はこちら
今回は、同じく“美人画”をテーマにした展覧会が開催されている実践女子大学香雪記念資料館をご紹介します。

 

■美の理想像、その変遷と描き方

実践女子大学香雪記念資料館『「美人画」再読-麗しい人の系譜』

実践女子大学渋谷キャンパス内にある実践女子大学香雪記念資料館では、女性による芸術、文化に関する資料の研究、収集、保管を行い、その研究成果を社会に広く公開するという理念のもと、女性の画家による絵画作品を中心に収集し、コレクションを築いてきました。毎年新しい作品が収蔵されており、今回の展覧会でも鑑賞することができます。

一般的な「美人画」と言ったときには、若い女性を描いた絵のことを思い浮かべるのではないでしょうか。そうした「美人画」が一般化するのは20世紀に入ってからのこと。江戸時代には中国の教養ある「文人」を理想とし、それを女性にもあてはめ、書物を読み書画を楽しむ女性の姿を中国風の「唐美人」や日本の女性として描き、鑑賞しました。


寺崎広業《唐美人》 1890年代 絹本着色 *新収蔵品
画塾を開き多くの門下生を輩出した寺崎広業。次の作品を描いた栗原玉葉も同塾で学んだ女性画家のひとりです。

 


栗原玉葉《童女図》 20世紀初期 絹本着色 *新収蔵品
あどけない表情で毬を大事そうに抱える女児。玉葉の女児を描いた作品は美人画とともに人気です。


近代になると西洋文化の影響で、容貌や若さが美人の条件とされ、女性は受動的存在と見なされました。絵画では頼りなげな女性や愛らしい女児の姿が好まれ、逆にその主題が女性にふさわしいとされたことから、池田蕉園(いけだ・しょうえん/1886-1917)や栗原玉葉(くりはら・ぎょくよう/1883-1922)といった女性画家たちが積極的に描き、活躍の場を得ました。

美しいのは女性ばかりではなく、古くは少年を鑑賞する主題がありました。また西洋美術の基本は人体の正確な表現でしたが、西洋でも女性が成人男性を描くのは一般的でないなか、岡村政子(おかむら・まさこ/1858-1936)や高畠華宵(たかばたけ・かしょう/1888-1966)は少年たちを描きました。

美しい人の基準も、それを表現する方法も様々で、そのジェンダーも一つではありません。「美人画」をこのようなテーマでとり上げるのは、日本の女子教育の先駆者である実践女子学園の学祖・下田歌子の号=香雪を冠した大学付属の資料館ならでは。本展覧会を、“美しい人”の歴史と多様性について考えるきっかけとしてみてはいかがでしょうか。

また、会場では出品目録と展覧会パンフレットを配布しています。丁寧な解説でより鑑賞が深まりますので、合わせてお楽しみください。

 

開催期間:2025年8月2日(土)まで
開館時間:10:30~17:00
休館日:日曜日
*入館無料

展覧会の詳細はこちら

 

\クイズイベント開催!/

今回展示されている、河辺青蘭(かわべ・せいらん/1868-1931)《態濃意遠図》と奥原晴湖(おくはら・せいこ/1837-1913)《百福図》には、たくさんの人物が描かれています。この作品に描かれた人数を数えて正解すると、オリジナルグッズがもらえるクイズイベントを開催中です。かなり細かく描き込まれているので、目を皿のようにして数えてください!


奥原晴湖《百福図》 1890(明治23)年 絹本墨画 *新収蔵品

 

正解者にプレゼントされるオリジナルグッズは、河辺青蘭《態濃意遠図》がプリントされたA5サイズのクリアファイル。ぜひ挑戦してくださいね!


読み応えのある展覧会パンフレットとクイズ当選者へのプレゼント

 

※正解した方お一人につき1点プレゼント。両方の作品で正解した場合も、プレゼントは1点のみとなります。
※プレゼントは数量限定のため、なくなり次第終了。気になる方はどうぞお早めに!

 

\同時開催!/

下田歌子記念室『所蔵品による特集展示特集展示Ⅰ―涼を呼ぶ』

下田歌子記念室では「涼を呼ぶ」と題し、所蔵品の中から幕末から近代までの女性画家による作品を中心に展示しています。柳や団扇、花火などを表現した作品から、涼を感じてみてはいかがでしょうか。

 

\渋アートが実践女子大学香雪記念資料館を訪問しました/
【施設の魅力】渋アートと巡る ── 実践女子大学香雪記念資料館

 

 

■浮世絵、最後の美人画。英朋の妖艶美に迫る

太田記念美術館『鰭崎英朋』

前回ご紹介した太田記念美術館で開催中の『鰭崎英朋』展。いよいよ7月21日(月・祝)までとなりました。

明治・大正時代、大衆に向けて雑誌や小説の単行本の口絵を描いた絵師、鰭崎英朋(ひれざき・えいほう/1880~1968)の画業の全貌を前期・後期にわたって紹介する本展覧会。前期と後期で全点展示替えとなっています。

会期中2回目以降の鑑賞は半券提示で200円引きになるリピーター割引(他の割引との併用不可)も実施しているので、前期日程をご覧になった方はぜひ後期日程もお楽しみください。

また、本展覧会の図録は展示作品187点をすべてフルカラーで掲載。英朋の美人画の魅力を自宅でもたっぷりと楽しむことができます。増刷の予定はないそうなので、どうぞお買い逃しのないように!


開催期間:2025年7月21日(月・祝)まで
開館時間:10:30~17:30(最終入館17:00)
休館日:月曜日(7月21日(月・祝)は開館)

展覧会の詳細はこちら
 

\学芸員さんによるスライドトーク開催!/ 
 展覧会の見どころを学芸員さんが解説。鑑賞がさらに深まります。
 7月11日(金)、15日(火)
 各回10:50より/約30分/定員50名
 ※当日10:30より、美術館受付にて整理券配布

\渋アートが太田記念美術館を訪問しました/
【施設の魅力】渋アートと巡る ── 太田記念美術館

 

 

■表装にも注目!作品の装いにこだわった松園

山種美術館【特別展】生誕150年記念 上村松園と麗しき女性たち

続いて、前回もご紹介した山種美術館『上村松園』展。こちらは7月27日(日)までの開催です。

美人画の名手として知られる上村松園(1875-1949)は、生涯にわたり気品あふれる女性像を描きました。鰭崎英朋と同時代に生きた女性画家です。京都画壇で活躍し、美人画に独自の境地を開いた功績により、1948年には女性として初めて文化勲章を受章しています。

松園は掛け軸の表装にもこだわりを持って裂地などを選んだ画家で、裂地を特別に注文したこともあったのだとか。作品に着物を着せる感覚で表具を選んでいたとも述べています。精緻な筆致を堪能できるだけでなく、作品と合わせて表装を楽しめるのも美術館での鑑賞ならでは。表装は図録などには掲載されないことが多いので、ぜひ会場でじっくりご覧ください。

 

開催期間:2025年7月27日(日)まで
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日[7月21日(月・祝)は開館、7月22日(火)は休館]

展覧会の詳細はこちら

 

\学芸員さんによるギャラリートーク開催!/ 
 展覧会の見どころを学芸員さんが解説!鑑賞がさらに深まります。
 7月16日(水)・23日(水)
 各回10:30より/約30分/定員25名
 ※当日9:50より、美術館受付にて整理券配布

\ゆかたで涼やかに、美術鑑賞はいかが?/
 山種美術館には「きもの特典」があり、きもので入館すると入館料が割引きになるサービスを実施しています。ゆかたでの入館も対象になりますので、ぜひご活用ください!
 ※割引・特典の併用はできません。

\渋アートが山種美術館を訪問しました/
【施設の魅力】渋アートと巡る ── 山種美術館

 

 

◆◇◆渋アート的視点◆◇◆

“美しい人”を訪ねて、今回は恵比寿駅から3館を巡るルートをご紹介します。
山種美術館と太田記念美術館との距離は2.3キロほど。少し離れていますが、過ごしやすい季節には散策を兼ねて徒歩での移動も可能です。夏の盛りは熱中症のおそれもありますので、バスや電車を活用してくださいね。
実践女子大学香雪記念館は入館無料、山種美術館と太田記念美術館は相互割引を実施中で、お得に展覧会を楽しむことができます。
この機会にぜひ3館周遊をお楽しみください!

<恵比寿駅>
 ↓ 徒歩:約10分
 ↓ or
 ↓ バス:約10分/都営バス(学06 日赤医療センター前行)「広尾高校前」下車徒歩約1分
山種美術館
 ↓ 徒歩:約10分
 ↓ or
 ↓ バス:約10分/都営バス(学03 渋谷駅前行)「東四丁目」乗車「青山学院初等部前」下車徒歩約1分
実践女子大学香雪記念資料館
 ↓
\施設周辺のおすすめスポットもチェック!/
 
 文化が薫るまち歩き -山種美術館編-〈恵比寿・広尾エリア〉

 ↓ 徒歩:約7分
 ↓ or
 ↓ バス:約8分/都営バス(学03 渋谷駅前行)「青山学院初等部前」乗車「渋谷駅前」下車
<渋谷駅>
 ↓ 地下鉄:約2分/東京メトロ副都心線
<明治神宮前(原宿)>
 ↓ 徒歩:約3分
太田記念美術館
 ↓
\鑑賞後に足を延ばしてみませんか?/
 
 文化が薫るまち歩き-太田記念美術館編-〈原宿・神宮前エリア〉