渋アート

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2026.03.19 UP

まち歩き

旅で出会う渋アート〈長野県・佐久エリア・小海町〉 

奥深い日本の文化に触れながら、人生を豊かにするアートとの出会いを楽しむ旅のパート2では、地域とつながる文化施設として小海町にある小海町高原美術館に行ってきました。

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―小海町高原美術館-
小海町高原美術館は、大自然の中でアートとふれあえる美術館です。雄姿を誇る八ヶ岳のふもと松原湖高原に1997年7月開館。「人と自然の融合・調和」をテーマに安藤忠雄により設計されました。地域の文化活動の拠点として、郷土作家、現代美術、建築、デザイン等を扱った、特色ある企画展を開催しています。

 

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「日々の暮らしと地つづきの芸術 小海町高原美術館」

長野県の東部、小海町。東京から2時間半ほどに位置し、標高1,200mを超える自然豊かな場所にあるのが「小海町高原美術館」です。八ヶ岳を望む高原の斜面からひょっこり現れた建築は、日本を代表する建築家の1人である安藤忠雄の設計。周りの白樺林と調和した景観に、旅に来たんだという感覚がむくむくと沸き起こります。

 

自然と調和する建築空間に誘われて
 
はやる気持ちを抑えながら館内に入ると、目に飛び込んできたのは正面の大きなガラス窓からみえる白樺の並木。高原の透き通った景色と建築のコラボレーションに、思わず釘付けに。コンクリートの壁に映る木の影が風で揺れ、無機質な素材に表情が生まれる様子は、ずっと見ていたくなるほどの美しさ。時間帯によって影の位置や長さが変わっていくのにも、自然の営みを感じ取ることができます。

白樺の並木が映し出す影の変化が美しい。

 

受付を済ませガラス張りの通路に歩みを進めていくと、太陽光が空間全体に差し込んでいました。窓枠で描かれた幾何学模様が、雲の動きとともにくっきりしたり、柔らかくなったり。光が織りなす美しさにより、安藤忠雄の建築的魅力を感じます。
ガラス越しに空を見上げると、高原らしい空の色。内と外がつながっていくような開放感あふれる景色に、再び目を奪われます。

ゆっくりと歩みを進めながら通路を抜け、展示室へ。カーブを描きながらゆるやかな坂道を下り、作品へ自然と近づいていくことができる設計のおかげで、身構えずに作品へと向き合えます。美術館はともすると、絵に向き合うために気合いとか、心構えとか、なにか張り詰めたものを感じることもありますが、ここでは緊張を感じることがありません。空間に抱かれていくような感覚は、とても心地よいものです。

展示室へ向かうガラス張りの通路には光が降り注ぎます。

直線と曲線が調和する建築。

 

地域の風土とアートの関係

訪問した際はちょうど、「シンビズム6」の会期中。長野県と関わりがある作家の作品や、インスタレーションなどが展示されていました。「シンビズム」は、美術館・博物館数が日本一の長野県内の学芸員たちがフラットに交流しながら、地域ゆかりの作家をキュレーションする独自の活動。連携していくことで、地域の芸術文化をより力強く根付かせ、発展させていく取り組みなのだそう。

もちろん作家自身も地域に深く目を向け、作品を制作しています。美術館周辺の環境をリサーチして仕立てられた作品を鑑賞していると、どこからともなくその地の文化や風土そのものが立ち込めてきて、すっかりその世界に包みこまれてしまいます。この体験は、都市部ではなかなか味わえるものではありません。実際に自分の足でこの地にいることに勝る体験はないからです。

展示室に自然と導くスロープ。

吹き抜けが特徴のダイナミックな展示室。


また、空間とインスタレーションの関係も見どころのひとつです。

「著名な建築家の作品であるこの空間と自分の作品を、どう“たたかわせる”のかはいつも作家たちの頭を悩ませているようです。試行錯誤を経てできあがった作品は、ここでしか見られないものなんです」
 
制作現場を見守る学芸員の中嶋さんは、そう話します。写真や動画などでは味わえない作品の臨場感は、やはり現地で鑑賞する醍醐味です。

 

あらゆる文化が交わり、人々を結びつける場所

そしてこのような魅力は、やはり現代アートならでは。それはまさに「小海町高原美術館」がこだわっているポイントのひとつです。

「生きている作家とならば、いま世界に起きていることを共有することもできるし、講演などのイベントでは直接言葉を交わすこともできます。同じ時代を生きる人として、距離が近く感じられますよね」

海外の作家を町に招き、長期滞在しながら作品制作をする取り組みにも力を入れているのだそう。作家も、積極的に地域や人と関わります。時には、学芸員と作家が互いに友だちのように親しくなることもあるのだとか。

そうやってできあがった作品を通じて、私たちも今この瞬間の世界を新しい視点で見ることができます。その一連の体験は、とても感慨深いものです。

静かな展示室内を歩いていると、やさしく、“親しみ”あふれる空気を感じます。人と、作家と、作品とが、垣根なくつながっていくその感覚の正体が、少しだけ分かった気がしました。

館内の窓越しに見る景色にも度々はっとさせられます。



鑑賞の余韻を味わう贅沢な時間 

館内の鑑賞が終わったら、外側から建築を眺めるのも忘れずに。敷地内にある展望台からは八ヶ岳を背後にした美術館全体を見晴らせるポイントもあり、季節ごとに様々な表情を見せてくれます。芝生エリアにも自由に立ち入りできるので、間近で建築を愛でながら散歩するのもおすすめ。

斜面という立地ならではの設計。


高低差のある敷地内を散策した後は、美術館に隣接するカフェ「花更紗」に立ち寄ることに。店内の客席は全て実用性と美しさを兼ね備えた「松本民藝家具」でしつらえられていて、どの席に座るかつい迷ってしまいます。地域の食材をふんだんに使ったご飯をいただきながら余韻に浸る時間は、贅沢そのもの。

 

カフェ「花更紗」の客席は全て「松本民藝家具」で揃えられています。


外の景色を眺めていたら、地元のお客さんとスタッフが楽しそうに話している声が聞こえてきました。

ここは、日々の暮らしと境目なく、続いている美術館。 豊かな自然とアートが呼応する鑑賞体験は、いつもとは違う充足感を与えてくれるのでした。

 

芝生エリアを歩きながらお気に入りの眺めを見つけるのも楽しみのひとつ。

 

小海町高原美術館
〒384-1103 長野県南佐久郡小海町豊里5918-2
TEL:0267-93-2133
https://www.koumi-museum.com/
※外部サイトに遷移します。

 

\おすすめ たちよりスポット/

松原諏方神社

美術館からほど近く、四季折々の表情を見せてくれる松原湖にも、ぜひ立ち寄って。湖のほとりに佇む「松原諏方神社」は、自然と調和した静かな境内。上社と下社に分かれており、ふたつを巡りながらお散歩するのもおすすめ。上社にある“野ざらしの鐘”が武田信昌(信玄の曽祖父)が寄贈したとされ、国の重要文化財に指定されています。

〒384-1103 長野県南佐久郡小海町豊里4319
TEL:0267-93-2375(昼のみ)
https://matsubarasuwajinja.com/
※外部サイトに遷移します。

2025年11月訪問
取材・文 櫻井麻美

 

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今回ご紹介した美術館にアクセス可能なホテルとして、長野県内にあるホテルハーヴェストをご紹介します。

ホテルハーヴェスト軽井沢

小海町高原美術館から車で約1時間。美術館と同じく豊かな自然に囲まれた環境に位置し、ホテルのすぐそばには塩沢湖が広がります。四季折々の風景からは、心地よい時の移ろいを感じることができます。癒しの空間で心身ともにリラックスしたリゾートステイを楽しんでみてはいかがでしょうか?

〒389-0111 長野県北佐久郡軽井沢町長倉291-1
TEL:0267-46-8109
ホテルハーヴェスト軽井沢 公式HP https://www.resorthotels109.com/karuizawa/
東急ハーヴェストクラブ軽井沢 公式HP(会員用) https://www.harvestclub.com/Un/Hotel/Rt/
※それぞれ外部サイトに遷移します。

 

─旅先で触れる その土地に息づくアートの物語 ─

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*旅で出会う渋アート<長野県・諏訪エリア>は4月公開予定です。どうぞお楽しみに!

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