「アゴン」
振付:バランシン/音楽:ストラヴィンスキー
20世紀を代表する振付家ジョージ・バランシンが残した作品群には、高度な芸術性、音楽性を誇るバレエが並ぶ一方、エンターテインメント性に富んだ演目も見受けられ、彼の才能の奥の深さ、幅の広さを物語っている。

バレエから不要な物語を追放し、人間の身体の動きが音楽との一体感の中で表現しうる美しさを前面に押し出す作品を創り出すことによって、バランシンは新しい時代にふさわしい新しいスタイルを打ち立て、バレエ界に革新をもたらした。彼の作品はしばしば“プロットレス・バレエ”“抽象バレエ”と呼ばれており、今回の来日公演でも、傑作中の傑作とされる「アゴン」や「セレナーデ」が上演される。
「セレナーデ」
振付:バランシン/音楽:チャイコフスキー
その一方で、ブロードウェイやハリウッドで振付を手がけた経験を生かし、アメリカのエンターテインメント精神に則った、観客を文句なしに楽しませる作品を生み出してもいる。来日プログラムでは、「スターズ&ストライプス」「フー・ケアーズ?」などが、こちらの路線の代表的な作品といえよう。

バランシン・バレエをレパートリーとしているバレエ団は少なくないが、そのエッセンスともいえるスピード、軽やかさ、キレのよさにおいて、彼が生涯をかけて育て上げたNYCBの右に出るものはない。その意味では、NYCBの付属機関であるスクール・オブ・アメリカン・バレエ(SAB)の存在も大きい。アメリカにバレエを根付かせるという目的のために招聘されたバランシンは、「だが、まずは学校だ」と返答したといわれる。彼のバレエ美学に基づいた教育理念によって運営されるSABは、実際、NYCBより14年も前に設立されており、今年は創立70周年にあたっている。  
「フー・ケアーズ?」
振付:バランシン/音楽:ガーシュウィン
バランシン・スピリットを叩き込まれたNYCBのダンサーたちが見せるパフォーマンスは、研ぎ澄まされた美しさと爽快感に満ち、他では味わえない感動と興奮を堪能させてくれる。バランシン作品以外のレパートリーも豊富かつユニークで、NYCBを他とは異なる、世界に二つとない個性を放つバレエ団たらしめている。

フリーライター/藤本真由
©Paul Kolnik, Martha Swope

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