
斎藤真一「街角の楽師(アンダルシアにて)~さすらい」
1986年、油彩・キャンバス、41x31.8cm
どこかで見たことがある不思議な懐かしさが漂う風景。
3人が繰り広げる空間の先には、望郷の世界が無限に広がっている―
昭和の失われていく風俗や風習を通して人間の悲哀・哀愁を描く斎藤真一は、ヨーロッパ放浪後に瞽女を描き、懐かしくも悲しく、人恋しいような雰囲気を孕んでいます。描かれた瞽女は哀愁漂う赤い夕陽の強い存在感とともに独特の光を放ち、失われていく日本の土着文化に独自の世界観を見出します。
音のない世界で生きてきた安元亮祐が生み出すのは、静かな祈りのメッセージ。灰色がかったおぼろげな風景に耳を澄ますと、穏やかな旋律が聞こえてきます。作品を前にすると、幼いころに夢の中で見た非現実でナイーブな空間に、自ずと吸い込まれるでしょう。
古き良き時代の空気や匂いが感じられる、詩情溢れる個性派が中佐藤滋です。一貫してアクリル絵具によるマチエールの表現を追求し、絶妙な構図で虚と実を併存させるペインティングやドローイング。物語を綴るデフォルメされた静物、人物と様々なモチーフを組み合わせてユニークな空間を生み出しています。
ありふれた日常の情景のなかに、遠い日に感じた懐かしさや悲しみを感じることができる作品たち。時が止まったように静かで、ノスタルジックな不思議な世界観。忘却の彼方にある記憶を呼び戻すきっかけになるでしょう。
本展では3人の油彩・アクリル画・ドローイング・版画作品を展覧販売します。