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数ある古典バレエの中でも全幕上演が少ないこの名作に、熊川哲也はかつて誰も想像し得なかった鮮烈な生命を与え、独創性に富んだ作品へと生まれ変わらせた。改訂の域を超えた、まさに熊川哲也の『海賊』と呼ぶにふさわしい歴史的傑作である。
圧巻の美術と衣裳が醸す、冒険映画さながらの迫力とリアリティ、大胆に再構築したオリジナルの音楽構成のもと、ロマンス、闘争、裏切りの連鎖・・・と冒険活劇の醍醐味を余すところなく引き出したストーリーテラー熊川の真骨頂と言うべきドラマ展開と衝撃の結末とは…
世界の舞姫 中村祥子と浅川紫織らが演じる美しきヒロイン、遅沢佑介、宮尾俊太郎のコンラッドを中心とする男性ダンサー陣の個性際立つ人物造形と舞踊シーンなど、芸術監督・熊川哲也がいま最も信頼を寄せるキャストで贈るバレエ史上空前のスペクタル・アドベンチャーをどうぞお見逃しなく!
海賊たちが打ち上げられたのはギリシャの浜辺。瀕死の海賊たちを発見したメドーラとグルナーラ姉妹や少女たちは彼らを手厚く介抱する。コンラッドはメドーラの美しさにひと目で心奪われ、ふたりは恋に落ちる。そこにやって来たのが奴隷商人のランケデム一行。ランケデムは、トルコ軍に占領されているこの地で軍の威光を笠に着て傍若無人に少女たちをさらい、金持ちに売りつけ儲けているのだ。メドーラとグルナーラ姉妹を捕らえて奴隷市場へと連行するランケデム。コンラッドら海賊たちは彼女たちを奪還すべく立ち上がる。
奴隷市が開かれる賑やかな町の広場。少女たちがそれぞれの国の踊りを披露しては買われていく。金持ちのサイード・パシャがグルナーラに続いてメドーラに魅入られ、買い取ろうとしたそのとき、競争相手が現れる。莫大な黄金を差し出し、驚く一同の前に正体を現したのはコンラッドら海賊たちだった。そして……。
海賊たちの隠れ処である洞窟、豪華な宮殿のハーレムと、次々に場を移して繰り広げられる美しき姉妹の奪還劇、そしてコンラッドとメドーラの恋のゆくえは――!?