
「迷宮」
2017年 木版画・コラグラフ
伝統木版の技法を駆使しながらも、コラグラフという版に様々な素材を貼り付ける制作工程で独自のスタイルを確立する爲金義勝(ためかねよしかつ)。現代的ともいえる鮮やかな色彩の中に現れる漆黒、降り注ぐ金箔、そして目に見えぬ安らぎのかたち。抽象的造形の中に再構築されたのは日本人の美意識であり、爲金の豊かな表現力と木版画に対する真摯な姿勢が感じられます。
「旅」を長年のテーマに制作を続ける爲金は、人生を旅になぞらえて、心で感じる情景を刻んできました。風や光、草花の息吹や季節の移ろいを散りばめた作品は、ふと立ち止まり、自分を見つめなおす時間を与えてくれます。それはまるで、せわしない旅路を歩む現代人にひと時の休息を与えてくれるかの様です。
今展の新作では、これまでの制作という長い旅の中で感じた、自然の美しさや明日への希望が情緒あふれる造形美と色彩で描き出されています。誰もが忘れかけている目には見えない大切なものをふと思い出させてくれる様な、人々の心の旅に寄り添う作品群をご覧下さい。
爲金義勝 Yoshikatsu TAMEKANE
1959年兵庫県西宮市生まれ。
関西学院大学商学部卒業。創形美術学校研究科版画課程修了。在学中、堀井英男に師事。
1991年から1994年までパリに滞在し、2003年より1年間、文化庁在外研修員として、アメリカ・ペンシルヴェニア大学美術学部大学院にて研修。
国内外の数々の個展・展覧会に作品を出品し、現在、日本版画協会会員、日本美術家連盟会員。