
「一緒に行こう」
木版 22.5×22.5cm
淡くて深い色合い、かわいらしく、それでいてどこか懐かしさの残る人や生き物たち。映画のワンシーンのように切り取られた情景は、誰も描かれてはいないものでも、何かがそこにいるような温かな気配であふれています。鈴木敦子の版画を見ていると、まるで記憶の中を旅しているかのように、切なさが優しく込み上げてきます。
鈴木敦子が木版画を学んだのは、名古屋芸術大学美術学部在籍中の夏休みの3日間のことでした。卒業後、本格的に木版画に取り組むようになると、独学で試行錯誤を繰り返しながら誠実に版と向き合い、今日では生活の一部として制作を行っています。鈴木敦子の作品独特の深くてやわらかな色合いは、版を重ねることで初めて生まれるものであり、そこに彼女の版画技術の高さを見ることができます。
静寂の中に穏やかな時間の流れを感じることができるのは、版木と共に作品を作っているという鈴木敦子の感性の豊さの表れなのかもしれません。木版ならではのやさしい風合いで表現される、暖かくてノスタルジックな鈴木敦子の世界を、心ゆくまでご堪能ください。
作家在廊予定: 6/25(日)