
金子 國義
「澁澤龍彦氏の肖像」
高度経済成長期の真只中、戦後の傷跡も癒え始め、欧米の映画や音楽などのカルチャーが若者たちを魅了し始めたものの、まだ封建的なモラルが色濃かった1960年代の日本。フランス文学者であった澁澤龍彦(1928-1987)は、これまで日本人が触れたことのない未知のヨーロッパの異端文学・美術を積極的に紹介すると同時に、これまでの文学者とは性質の異なる独自の視点から翻訳から評論、エッセイ、小説と多岐に渡る執筆活動を展開し、時代の寵児となりました。
マルキ・ド・サドの研究者であり、「幻想文学」の第一人者として新しい分野を確立させた一方で、暗喩的に用いられる「エロス」や「生と死」、その深淵の果てにある「聖なるもの」といった独自のパラドクスは、時にはスキャンダルとして事件に発展。表現の自由を論点に裁判となり、澁澤の言動は当時の社会問題として注目されます。
ポーリーヌ・レアージュの『O嬢の物語』でデビューした金子國義をはじめ、球体関節人形で知られる四谷シモンなど、澁澤に寵愛・影響を受けた作家は非常に多く、澁澤のDNAは平成の時代に生まれた世代にまで今もなお受け継がれています。
没後30年を迎える本展では、澁澤龍彦が独自の視点で見出した、金子國義、合田佐和子、細江英公、四谷シモンなどのほか、澁澤が日本に紹介した古典から現代までの海外作家、また同時代に実験的な表現活動でセンセーショナルを巻き起こした作家たちの油彩・立体・版画、写真作品、ポスター、希少本、関連書籍を展覧販売します。
●出品予定作家
赤瀬川原平、池田満寿夫、金子國義、加納光於、合田佐和子、小林健二、土井典、中村宏、野中ユリ、
細江英公、横尾忠則、四谷シモン、エルンスト、クリンガー、ゾンネンシュターン、デルヴォー、
ビアズリー、フィニ、ピラネージ、ベルメール、マグリット、マン・レイ、モリニエ 他