
「戦争ごっこ」
2007年 アクリル・麻キャンバス 115x115cm
ヴェニス在住の画家カロリーナ・ラケル・アンティッチの絵画作品は、主なテーマとして思春期を迎える前後の少年少女たちの姿が描かれています。例えば戦争ごっこに興じる半ズボン姿の細身の少年達や、自我の目覚めを感じさせる表情をたたえた少女のポートレートなど。アンティッチ作品には、子供の持つ純真さや初々しさだけでなく、意固地さや残酷性といった多面的で移ろいやすい感情の揺らめきが、大きく余白を残した空間の中に繊細なタッチで捉えられています。
アンティッチは近年、イタリアでも人気の高い吉本ばなな作品のイタリア語翻訳版の表紙デザイン原画を手掛けており、作家が描く少年少女らはティーンエイジャーの登場人物たちの感情の揺らめきを繊細に描く吉本の小説世界に通じる瑞々しい感受性が感じられます。
日本で初めてアンティッチの仕事を包括的に紹介する機会となる本展では、2007年から現在に至る過去10年間に制作されたキャンバス作品を中心に、水彩や鉛筆デッサン、磁器彫刻、コマ撮り手法で制作されたアニーメーションなどを加え約30作品にて構成します。