
上:安元 亮祐 「灰色の風の中で」1991年 キャンバス、アクリルコラージュ
下:池田 満寿夫 「化粧する女」 1964年 銅版画
グレーの階調を自在に行き来し、奔放に時に物憂げな線描が心を打つ安元亮祐の作品群。風景も人物も動物も、思考が揺らぐ遠近感の中、その形をどこかに忘れてきたかの様な佇まいで、静かに私たちの前に現れます。聴覚を失った彼が描き出すそれらは、静寂の中に懐かしい言葉のかけらを探し求めるかの様に、その豊かな情緒溢れる表現力で観る者を魅了し続けています。
芸術という枠にとらわれず、様々な分野で自らの表現を追求し続けた池田満寿夫。同時に新しい才能を見出し作品をコレクションすることで、若いアーティストたちの支援を続けた事でも知られています。安元もそのひとりであり、個展の案内状に寄せた推薦文の中で、こう語っています。「…マチエールに塗り込められた澄んだナイーブなこの感性は、画家が音のない世界で現実の中に心象を求めながら制作しているからだと分かった。松本竣介と共通する海辺や町並を濡らす驟雨のようにデリケートでしっとりとした画肌は私たちを限りなくなつかしい詩人の風景へ誘ってくれる… 池田満寿夫」
Bunkamura Galleryにて10年振りとなる今展では、安元が最も尊敬し影響を受けた作家池田満寿夫へのオマージュ作品を発表します。池田作品との出会いについて「どれもこれもラクガキみたい、でも全てが生きている」と語る安元。感謝と挑戦の想いを込めて制作した新作のペインティング、銅版画、初期の風景作品の他、特別展示と致しまして、没後20年を迎える池田満寿夫の、ヴェネツィアビエンナーレ大賞を受賞した版画作品をはじめとする代表作約15点も展覧販売致します。両者のほとばしる才能をご堪能下さい。