2025.04.05 UP
渋アート施設おすすめ周遊プラン-東洋と西洋の磁器の魅力を堪能
比較的近い距離に点在する渋アート連携施設。ひとつの展覧会に足を運んだのなら、施設を周遊して、さまざまなアートに触れてみませんか。
2024年秋に開催したスタンプラリーイベント『渋アート&ウォーク』では多くの方にご参加いただき、中でも、松濤エリアにある戸栗美術館と渋谷区立松濤美術館(以下、松濤美術館)を組み合わせて巡られた方が多くいらっしゃいました。戸栗美術館と松濤美術館の距離は徒歩で7分ほどと、散策を兼ねて巡るのにちょうど良く、双方の美術館スタッフの方によると、普段から合わせて鑑賞を楽しまれる方も多いそうです。
■東洋と西洋の美を巡る
距離の近さだけでなく、この春両館で開催される展覧会は、展示内容にも共通のテーマが見られます。陶磁器専門の美術館である戸栗美術館では、4月12日から開催される展覧会で、西洋に輸出された後、逆輸入された作品をはじめ、器形や装飾から輸出向けと考えられる伊万里焼が展示されます。一方、一年を通してさまざまなジャンルの展覧会が開催される松濤美術館では、欧米において西洋諸窯のなかで最高峰とも称されるセーヴル窯で造られた磁器の魅力を紹介する展覧会を開催中。東洋と西洋、それぞれの磁器の美を堪能できるまたとない機会です。ぜひ両館を巡り、その魅力を体感してください。
■妃たちがこよなく愛したセーヴル磁器の魅力
渋谷区立松濤美術館「妃たちのオーダーメイド セーヴル フランス宮廷の磁器 マダム・ポンパドゥール、マリー=アントワネット、マリー=ルイーズの愛した名窯」
17世紀の東西貿易において、中国や日本の磁器は、金銀や宝石などと同様に非常に価値の高いものとして取引されていました。当時、西洋では硬質磁器や白磁を造ることができなかったためです。高価な東洋磁器を入手できることは、西洋の王侯貴族たちにとってステータスの一種。彼らは、こぞってそれらを手に入れ、宮殿を飾りました。
西洋で硬質磁器の原料となる磁土カオリンが発見されると、18世紀初頭にドイツのマイセンで初めて白磁の焼成に成功。フランスでも、ブルボン王朝が設立した王立セーヴル磁器製作所によって、硬質磁器が造られるようになります。セーヴル磁器のデザインは西洋諸窯に大きな影響を与え、西洋磁器のスタイルの基盤を築きました。華麗な色彩と絵画的な筆致で描かれた作品は、まさに思い描く西洋磁器そのものといえるでしょう。
セーヴル磁器は、もともと王侯貴族向けの注文生産だったため、現存数が限られています。しかし近年、日本でも優れたコレクションが確立されており、本展覧会ではその美しい魅力に触れることができます。
開催期間:2025年4月5日(土)~ 6月8日(日) 10:00~18:00 (入館受付は17:30まで)※金曜日は20:00まで(入館受付は19:30まで)
休館日:月曜日
※5月5日(月)は開館
※4月30日(水)、5月7日(水)は休館
■西洋があこがれ、大きな影響を受けた伊万里焼
戸栗美術館「西洋帰りのIMARI展―柿右衛門・金襴手・染付―」
西洋があこがれた東洋の陶磁器。17世紀初頭に設立されたオランダ東インド会社は、17世紀中期以降、西洋諸国の中では唯一、日本との直接的な貿易を担い、西洋向けに日本製の磁器である伊万里焼を扱いました。
海を渡った伊万里焼は、西洋では実用品としてだけでなく、王侯貴族たちの城館を飾る室内調度品として重用されました。さらに、西洋で造られる磁器にも大きな影響を与え、伊万里焼のかたちや文様が西洋磁器に盛んに取り入れられました。また、西洋の生活文化に合わせて作られた伊万里焼や、金属装飾など加工の痕跡が残る例もみられます。
19世紀以降、17~18世紀の伊万里焼は「Old-Imari」などの名で輸出・収集の対象になりました。現在も西洋に残る作品がある一方で、1970年頃からの日本の高度経済成長を背景に、日本へ「里帰り」を果たしたものも少なくないとのこと。これらの作品の展示を通して、伊万里焼貿易の様相や、西洋で愛された伊万里焼の魅力を堪能することができます。
開催期間:2025年4月12日(土)~6月29日(日) 10:00~17:00(入館受付は16:30まで)※金曜日・土曜日は10:00~20:00(入館受付は19:30まで)
休館日:月曜日・火曜日
※4月29日(火・祝)、5月5日(月・祝)、5月6日(火・休)は開館。
※5月7日(水)は休館。
○会期中のイベント情報
◇展示解説
4月26日(土)・6月21日(土) 各日 14:00~(約45分)
参加費:無料(要入館券)/予約不要
\こちらもチェック!/
アットホームな雰囲気で展示内容をより深く楽しめます。
渋アートが過去の展覧会にて取材した展示解説の模様はこちら
『みる・まなぶ・ふかめる ―戸栗美術館・展示解説―』
◇特別講演会「王様と古伊万里」*講師:森由美(戸栗美術館学芸顧問)
5月24日(土) 14:00~(約60分)
参加費:無料(要入館券)/予約不要
※座席に限りがあります。詳細は戸栗美術館ホームページをご覧ください。
https://www.toguri-museum.or.jp/
◇ラウンジ&ギャラリー・トーク「西洋好みの伊万里焼を探る」*講師:戸栗美術館学芸員
6月2日(月) 14:00~(約120分)
参加費:一般1,500円(税込、要入館券)/年間パスポート会員1,200円(税込)
・要事前予約
・先着30名様
※予約方法等の詳細は戸栗美術館ホームページをご覧ください。
https://www.toguri-museum.or.jp/
\担当学芸員さんからのメッセージも!/
お互いの展覧会を鑑賞しあった担当学芸員さんお二人のお話を交えながら、両方鑑賞すると更に楽しめるポイントをご紹介します。
『渋アート施設おすすめ周遊プラン-東洋と西洋の磁器の魅力を堪能 2 学芸員さんが語る、鑑賞のポイント』はこちら
\公園やカフェなど周辺スポットを巡ってみませんか?/
戸栗美術館と松濤美術館の間に位置する渋谷区立鍋島松濤公園。鑑賞の余韻に浸りながら休憩するのにおすすめです。また、少し足を延ばした先の駒場周辺にも落ち着いて過ごせるスポットがあります。展覧会と合わせてまち歩きもお楽しみください。
文化が薫るまち歩き-渋谷区立松濤美術館編-〈神泉・駒場エリア〉