2025.03.21 UP
【展覧会情報】
渋谷区立松濤美術館「妃たちのオーダーメイド セーヴル フランス宮廷の磁器」
渋谷区松濤にある渋谷区立松濤美術館。4月5日(土)より開催される展覧会をご紹介いたします。
■「妃たちのオーダーメイド セーヴル フランス宮廷の磁器 マダム・ポンパドゥール、マリー=アントワネット、マリー=ルイーズの愛した名窯」
西洋磁器は、中国磁器への憧れからヨーロッパ各地で開発が試みられ、18世紀に入ってドイツ、マイセン窯で初めて焼成に成功しました。そしてフランス、ブルボン王朝が設立した王立セーヴル磁器製作所によって、真に西洋的な様式が創造されたと言って良いでしょう。その設立にはルイ15世と寵妃マダム・ポンパドゥール(侯爵夫人)が深く関わり、その後もフランス王室と帝室、共和国が運営を引き継ぎました。
セーヴル磁器のデザインはマイセンをはじめヨーロッパ諸窯に多大な影響を与え、西洋磁器のスタイルの基盤となりました。華麗な色彩を使って、当時流行のファッションを取り入れた小花文や花綱文をはじめ、鳥や人物、風景などを極めて絵画的な筆致で描いた作品群は、日本人がイメージする西洋磁器そのものといえるでしょう。
欧米においては、西洋諸窯のなかでセーヴル窯が最高峰とも称されているにもかかわらず、日本ではその魅力に触れる機会はあまりありませんでした。これはもともと王侯貴族向けの注文生産であったために現存数が限られているためです。しかしながら近年、日本でも優れたセーヴル磁器コレクションが確立されてきました。
そこで本展では、国内コレクションにより、ルイ15世からナポレオン帝政時代を中心に、ポンパドゥール侯爵夫人、マリー=アントワネット王妃、ジョゼフィーヌ皇后やマリー=ルイーズ皇后などの妃たちがこよなく愛したセーヴル磁器の魅力を紹介します。
■第1章 ヴァンセンヌからセーヴルへ ―ポンパドゥール侯爵夫人の夢―
セーヴル窯の前身は、1740年頃にパリの東方にあるヴァンセンヌ城にシャンティイ窯から逃れてきた陶工デュボア兄弟に始まります。活動を本格化させたヴァンセンヌ窯は、1756年にはポンパドゥール侯爵夫人の居城に近いセーヴルへ移転して「セーヴル窯」に改称し、1759年には夫人の献言により、ルイ15世(在位1715-74)の全額出資によって運営される「王立陶磁製作所」となりました。フランス国王の絶大なバックアップのもと、化学者、デザイナー、彫刻家、画家、金工家など当時の第一線で活躍する技術者・芸術家が製作に投入されました。
《淡紅地色絵金彩天使図四方皿》1759年、Masa’s Collection
側面に透かしを入れた角皿で、カップ&ソーサーのトレー。本作のピンク色はポンパドゥール侯爵夫人の時代にのみ使われた色で、後に「ポンパドゥール・ピンク」と称された。
《色絵金彩花文台付皿》1758年、Masa’s Collection
冷菓用アイスカップを並べるスタンドで、緑のリボンをあしらった意匠。1758年にオーストリア大公妃マリア・テレジアに贈られたサーヴィス(食器セット)の一つとされる。
■第2章 マリー=アントワネットの宮廷で ―王立磁器製作所の洗練と萌芽―
ルイ16世(在位1774-92)はセーヴル磁器の最大のパトロンであり愛好家であったといいます。ヴェルサイユ宮殿をはじめとする王宮をセーヴル磁器で満たし、王妃マリー=アントワネットに贈るほか、国内外の外交用、政治用の贈答に使いました。
この時代のセーヴル窯の製品は、ポンパドゥール侯爵夫人の時代から、より軽やかな作風に変化し、王妃マリー=アントワネットがリードした当時流行の服飾や室内装飾に共通する意匠の作品が加わりました。また、ポンペイなどの古代遺跡が発見されたことに刺激されて新古典主義がヨーロッパに広がると、甘美で装飾的なロココ様式に対して、ギリシア・ローマを規範とし、より均整の取れた荘重な様式を取り込んだ作品も現れます。
《色絵金彩花文皿》1781年、個人蔵
マリー=アントワネットが初めて自分から注文したサーヴィス、通称「薔薇と矢車菊の帯飾り」のうちの1枚。
■第3章 マリー=ルイーズとナポレオンの時代 ―改革とアンピール様式―
フランス革命でセーヴルの重要な顧客である貴族の多くは死亡するか亡命し、セーヴル窯は存亡の危機に見舞われました。しかしヨーロッパ中で得ていた高い名声のためか、閉鎖は免れます。1800年に所長に就任したアレクサンドル・ブロンニャールは、合理的な考えの管理者、経営者としてすぐれた能力を発揮し、セーヴル窯の近代化に努めました。
以降のセーヴル窯は、コストのかかる軟質磁器の生産をやめ、生産効率の良い硬質磁器生産に大きく舵を切りました。王侯貴族に求められた細々とした器種はなくなり、記念碑的なテーマの連作ものや公的傾向の強い正餐用サーヴィスなどを製作しました。また、新古典主義を反映した、荘重・謹厳な趣のアンピール(帝政)様式を創出しました。
《淡黄地色絵金彩花文動物図スープカップ》1804年、個人蔵
ナポレオンの戴冠を記念して作られた。チューリップとフォンテーヌの寓話の動物たちが描かれる。
■第4章 カップ&ソーサーでたどるセーヴル ヴァンセンヌから現代まで ―河原勝洋コレクションー
町田市立博物館(現在休館中、2029年春頃に(仮称)町田市立国際工芸美術館として開館予定)が所蔵する河原勝洋コレクションは、ヴァンセンヌ窯およびセーヴル窯のカップ&ソーサーに特化した110件余りからなる作品群で、西洋独自の飲食器文化の萌芽とその展開を一望できるものです。本展では選りすぐりの30件を紹介します。
《青地色絵金彩風景図カップ&ソーサー》1760年、町田市立博物館蔵(河原勝洋コレクション)
聖霊騎士団の最高勲章である青綬の色に基づいている。18世紀の他窯には見られない色で、1753-55年にかけて完成したルイ15世のための食器揃えで初めて用いられた。
■『セーヴル フランス宮廷の磁器』展を体験できるイベントも目白押し!
共に本展監修者である矢島律子氏(鶴見大学文学部教授)と松村真希子氏(美術史家)による記念対談『東洋の陶磁器 VS. 西洋の陶磁器』(4月29日(火・祝)午後2時~、要事前申込)や、チェリスト・水谷川優子氏を招いてのコンサート『チェロで馳せるセーヴル磁器・時空の旅~憧憬と想像~』(5月11日(日)午後2時~、要事前申込)、デミタスコレクター・村上和美氏による特別イベント『アンティークのデミタスでコーヒータイム』(5月17日(土)午後2時~/午後4時~、要事前申込)などイベントも目白押し。また、学芸員によるギャラリートーク(事前申込不要)も期間中3回開催されます。
お申込み方法など、くわしくは渋谷区立松濤美術館ホームページをご確認ください。
*外部サイトに遷移します
*お申込み締切:記念対談4/12(土)、コンサート4/24(木)、コーヒー4/30(水)
開催期間:2025年4月5日(土)~ 6月8日(日)
開館時間:午前10時~午後6時 (毎週金曜日は午後8時まで) *入館は閉館時間の30分前まで
休館日:月曜日(5月5日は開館)、4月30日(水)、5月7日(水)
会場:渋谷区立松濤美術館
京王井の頭線 神泉駅 下車徒歩5分
JR・東京メトロ・東急電鉄 渋谷駅 下車徒歩15分
〒150-0046 東京都渋谷区松濤2-14-14
TEL: 03-3465-9421
https://shoto-museum.jp
※MY Bunkamuraでの本展覧会チケットのお取り扱いはございません
チケットの詳細は渋谷区立松濤美術館ホームページをご覧ください
*外部サイトに遷移します
主催:渋谷区立松濤美術館 協力:町田市立博物館、ロムドシン 企画協力:AsHI