ホセ&ニール組
 細部に至るまでブラッシュアップが施され、新しく生まれ変わった感のある今回の「白鳥の湖」。なかでも作品にフレッシュな魅力を与えているのが、新たに“ザ・スワン/ザ・ストレンジャー”&“王子”を踊るダンサーたちの個性だ。しかも今回はまったく対照的な二組のペアが登場、それぞれに魅惑的な作品世界を展開してくれる。
  ホセ・ティラード&ニール・ウェストモーランドは、共にクラシックで優雅なムードをもつダンサーで、ルックス的に初演のアダム・クーパー&スコット・アンブラーのコンビをほうふつとさせる。190センチと長身のホセは、“ザ・スワン”でも“ザ・ストレンジャー”でも大らかな魅力を発揮、包み込むような安心感あふれる演技を披露する。りりしくスマートなニールは、まさにイギリスの貴公子にふさわしい容貌の持ち主。そんな二人のデュエット・ダンスにはエレガントな雰囲気がただよっていて、孤独な王子が一羽の白鳥と戯れるという古典版「白鳥の湖」さながらの美しいヴィジュアル・イメージを描き出す。
ジェイソン&クリス組
 一方のジェイソン・パイパー&クリストファー・マーニーは、キュートなルックスと持ち味が光るコンビ。コンテンポラリー・ダンス畑出身のジェイソンは、観る者に緊張感を与えずにはおかないキレの鋭い踊りと、いたずらっ子を思わせるはつらつとした演技で、“ザ・スワン”、“ザ・ストレンジャー”、どちらの場面でも人々を自由自在に翻弄してゆく。対するクリスの王子は、少年らしいナイーブさがかわいらしく、喜怒哀楽のはじけるような表現も魅力的だ。二人が一体となったかのように呼吸を合わせ、矢継ぎ早にムーブメントを展開してゆくデュエット・ダンスは、息を飲むような興奮に満ちている。そして、成長を遂げた二人が運命の前にあえなく挫折する終幕は、いっそう悲劇の色彩を増す。
 ノーブル&アダルトなホセ&ニール組、キュート&フレッシュなジェイソン&クリス組、どちらの主演コンビで観ても、異なる角度から深い作品世界を堪能することができる今回の「白鳥の湖」。しなやかな動きと繊細な感情表現を兼ね備えた首藤康之が“王子”役として加わり、さらなる魅力を満喫できること間違いなしの日本公演の開幕が楽しみだ。
text by藤本真由(フリーライター)
© Bill Cooper 2004


ページの先頭に戻る
Copyright (C) TOKYU BUNKAMURA, Inc. All Rights Reserved.